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医師

2024.11.05

小児がんについて

ジャパンハートこども医療センターはカンボジア国内で唯一、小児の固形腫瘍を診ている病院です。
開設当初、小児がん患者数は年間20-30例でしたが、現地の小児病院と連携し紹介が増加したことで今では年間110例前後を受け入れています。

現在は神経芽腫・肝芽腫・腎芽腫・横紋筋肉腫・骨肉腫・リンパ腫などの子が合計30人~40人ほど入院しています。
日本ではこれほど多くの小児固形腫瘍の子ども達が1つの病院に入院しているのは珍しいと思います。

ジャパンハートこども医療センターの運営費は日本からの寄付で賄っており、小児患者さんの治療費は無料です。
小児がん患者1人あたり治療費は約80-100万円かかると言われています。

それに対し、カンボジアの平均年収は24万円です。
一般家庭では支払うことができないのは明白です。
実際に、「ジャパンハートが無かったら諦めていた」と話す患者さんもいました。

皆さんは小児がんのsurvival gapについて知っていますか。

小児がんは世界全体で年間約20万人が発症しているとされていますが、死亡者数の約90%が低・中所得国に集中しています。
小児固形腫瘍に関しては、日本などの先進国では生存率約80%ですが、カンボジアなどの途上国では約20%と低い値です。

その理由としては、診断を受けられない、診断の遅れ、未熟な医療体制が挙げられます。
病院が遠くアクセスが難しい、病院を受診するお金がない、専門的知識を持つ医師が不足している、医療資源が限られていることなどが原因です。

例えば、カンボジアでは年間600~700人が小児がんを発症していると考えられていますが、実際に小児がんと診断されたのは300人程度です。

また、経済的負担も理由として挙げられます。
カンボジアには公的な医療保険制度がないので、お金がなくなったら治療費が払えず、治療を断念するしかありません。

実際にジャパンハートに入院している子達の中でも、他の病院に通っていたがお金がなくなり治療を断念しジャパンハートに来た子達がいます。
適切な治療を受けられずに多くの子どもたちが死亡しており、国の境目が生命の境目になっている状況です。

ジャパンハートはカンボジア国内で唯一、小児の固形腫瘍を診ている病院なので、カンボジア全土から固形腫瘍の子が紹介されてきます。
2018年からジャパンハートが本格的に治療を開始して小児固形腫瘍の生存率を20→56%まで改善しました。
さらなる生存率向上に向けて奮闘しています。

ジャパンハート メディカルチーム 医師

医師
入澤 里桜

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