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乳がん検診への道のり
10月12−13日の2日間にわたって、乳がん検診を行いました。これまでの道のりを振り返りたいと思います。

私は普段成人病棟とOPDで働いています。働いていて思うことは、どうしてこんなに悪くなってから来る人が多いのだろうという疑問と、もっと早く来ていれば治療できたのにということです。特に乳がんの患者さんにおいては、小さいしこりで来院する人はわずかであり、ほとんどがすでに大きく今にも離開しそうな人やすでに離開してしまっている人ばかりです。中には最後の望みをかけて来院したものの離開の範囲がひどく手術すら行えないため、肩を落として帰っていく姿を見送ることしかできない悔しさも感じました。カンボジアでは検診や予防医療・早期発見といった概念は浸透しておらず、どうしても我慢できなくなった時や痛みに耐えきれなくなってから病院に来る人が多いのが現状です。また、貧困や医療アクセスの悪さも要因の一つです。乳がん検診を通して、乳がんの早期発見・早期介入ができるようになること、そして検診を通して人々の健康意識を上げることができないか、という想いのもと、この活動は始まりました。
まずはヘルスセンター(以下HC)へ出向き、私達がどういう想いをもって乳がん検診を行いたいか活動の主旨を理解してもらうためにプレゼンを行いました。JHMCの今後の方針として地域医療への貢献があります。地域の人々にとって集まりやすい場所はHCであり、JHMCと各HCが連携することでポンネル地区全体の医療の質の向上を目指すことも目的とし、HCで検診を行うことにしました。はじめは受け入れてもらえるか不安でしたが8か所すべてのHCが快諾してくださり、とても協力的であったことが印象的でした。

その後はHCスタッフと顔の見える関係を構築するため、月1回HCを訪れました。JHスタッフからHCスタッフへ向けて「乳がんとは」「セルフチェックの方法」についてレクチャーを行ったり、広告媒体はどういうものがよいかなど意見交換をしました。さらに、地域住民へのレクチャーや広報についてはHCスタッフの皆さんにしていただくなど、協働することを意識しました。

今回使用したレクチャー資料のうち一つはクマエナースに作成してもらいました。活動においてクマエナースを置き去りにせず、主体的に関わってもらうことを大切にしようと心がけていたためです。今後何年もこの活動を継続して行うにあたり、日本人スタッフだけでなく現地スタッフの理解や協力は必須です。私自身含め、乳がんは専門領域ではありませんが一生懸命勉強しスライドの作成を行いました。レクチャー当日、クマエナースが回数を重ねるごとに堂々と自信を持って話している姿はたくましく、また彼女自身も自分が成長できていると実感し、達成感を抱くことができていました。その姿を見て、私自身も自分のことのように嬉しいと思いましたし、自分は自身の成長もそうですが、クマエスタッフの成長を見守り、彼らの成長や達成感が自身の喜びやモチベーションでもあるのだと気づくことができたきっかけでした。初めての試みですが、クマエスタッフと協働して楽しく準備ができたと振り返ります。(次の投稿へ続く⋯)

看護師 蛭川陽香
