2020.02.04
かけがえのない仲間との出会いと経験を積み重ねて得たこと。
▼活動地での研修内容・経験したことを教えてください。
ミャンマーでは主に手術室と病棟で周手術期の看護実践を行っていましたが、年齢も疾患も幅広く、時には内科疾患の患者さんも入院されてきますので、毎日が学びの日々でした。
知識や技術の不足だけでなく、時間や処置に追われてしまったり、何もできないという焦りから日々とにかく悔しかったです。しかし限られた医療資源で何ができるか考えたり工夫したりと、みんなで話し合って方向性を一致させていく行程はとてもやりがいがありました。
食事や掃除当番、シフト作成、研修生の教育プランなどのシステム作りや、週1回の日本語教室の開催など、医療活動以外にも様々なことを経験する事ができました。
▼ジャパンハートの研修に参加を決めた理由を教えてください。
高校生の頃、将来の進路について考えた時に早く自立したかったというのもありましたが、誰かの役に立ちたい、いつか途上国での医療活動に参加したいという思いから看護師を目指しました。看護師になってからは日々の業務や勉強にとにかく精一杯だったのと、力不足の自分が海外に行って何ができるのだろうという思いなどからなかなか勇気が出ず、海外での医療活動や生活はいつか叶えたい「夢」でした。
看護師4年目の時に職場で開催されたジャパンハートの講演会に参加しました。実際に現地で活動された医師や看護師のお話を伺い、自分の気持ちがどんどん前向きになっていくのを実感しました。そして、その時の吉岡先生の「悩むなら一歩踏み出してみたらいい」という言葉に背中を押され、参加を決意しました。また、海外での医療活動に必要と考える十分な知識も技術も語学力もない中で、看護研修という形でボランティアとして学びながら医療活動に参加できるジャパンハートは、自分に合っていると感じました。
その時の職場の仲間や上司、友人達が私の決意を応援してくれたことも大きかったです。
▼現地で医療をする楽しみ、醍醐味はなんですか?
参加する目的は人それぞれですが、高いモチベーションを持ったかけがえのない仲間と出会えたことです。学びの場は自分で見出すものだと思っています。日本でも海外でも学ぶことはできますが、何を学びたいか、何を深めたいかで場所を選ぶ事は大切です。そういった事を実感できたのも現地で生活しながら医療活動に参加したからですし海外に出たからこそ視野が広がったと感じます。
研修生やミャンマー人スタッフとの共同生活も醍醐味の1つだと思います。言葉も価値観も人生経験も様々なメンバーと病院でも家でも常に一緒にいます。色々な事がありますが、頼れる仲間がそばにいるのはとても心強かったです。
★最高だなと感じたこと★
・最強メンバーと出会えたこと
・村にあるカフェのラペイエ(甘い紅茶)、みんなで一息つける時間
・新月の時に停電した時の星空
・ミャンマー料理や南国フルーツが美味しかったこと
・患者さんが退院する時
・ミャンマー人スタッフとパゴダ(仏塔)に行ったこと
・患者さんが「道に落ちてた‼」とプレゼントしてくれたマンゴーが美味しかったこと
・院内で階段から落ちた時に患者さんが術後なのに走って助けに来てくれたこと(申し訳なさと恥ずかしさと痛みでその場からしばらく動けませんでした・・・)
▼活動地での忘れられないエピソードがあれば教えてください。
約15年前に受傷した顔や首の熱傷後瘢痕に対する手術後の創感染のため、毎日3回処置を実施していた患者さんを担当させていただきました。抗生剤や創処置の方法、使用する物品などスタッフと話し合い、医師に助言をもらいながら試行錯誤し対応していました。1回の処置には1時間程かかります。苦痛に耐えながら処置を受ける患者さんでしたが処置が終わると必ず「いつもありがとう」「大丈夫よ」言ってくれました。患者さんの傍にはいつも娘さんがいて、傷をみて涙を流しながらも、処置に悪戦苦闘する私の汗を拭いてくれました。私が病院に出勤すると大好きなジャスミンのお花で髪の毛を結ってくれました。手術も術後の経過も大変だったはずですが、私を含めスタッフの事をいつも気にかけて下さいました。どんなに辛い状況でも人の事を想える二人や、ミャンマーの人々の心の豊かさに、気づけば私の方が元気をもらっていました。
無事に退院を迎えた後、少したってから患者さんと娘さんが病院に来て下さいました。患者さんは「何も隠すことなく外を歩けるようになった、もう充分」と、そして娘さんは「お母さんは笑う事が多くなった」と話されました。すごく嬉しかったです。同時に患者さんを受け持つという事は目の前の患者さんと向き合う事であり、それはその人の人生の一部に自分が関わるという大きな責任があるのだと、患者さんを受け持つことの重圧を実感しました。研修を通して、いつでも誰にでも頼れる環境に甘えていたこと、責任を持つということに対していかに意識が低かったかを痛感する出来事がたくさんありました。
▼帰国後はどのような活動をされていますか?
帰国後の事は特に考えずに参加しました。研修で学んだ事を一つ一つ振り返り自分のやりたい事を考えた時に、もう一度、救急看護を学びたいと思い帰国して2か月後に救命救急センターで働き始めました。同時に、ジャパンハートの国内医療事業の一つ、「Smile Smile PROJECT」が立ち上がることとなり、働きながらボランティアスタッフとして国内でも活動していく事となりました。
2011年3月、東日本大震災の時はジャパンハートの医療チームメンバーとして宮城県での医療活動に参加しました。その時の経験や出会いは今の私にとても大きな影響を与えています。災害医療を本格的に深めたいと思いましたし、心の医療について改めて考えるきっかけとなりました。
現在は大学病院の救急部で、救急看護認定看護師として臨床で看護実践を行いながら、病気と闘う子供たちとご家族をサポートしていくSmile Smile PROJECTのボランティアスタッフとして活動しています。旅行やイベントに参加されたご家族から「このプロジェクトがなければ家族で旅行しようとは思わなかった」「何かあったら頼れる人がいるというだけで安心する」といった言葉をいただいた時はとても嬉しかったですし、プロジェクトの意義を実感しました。闘病中であっても家族が揃って笑顔で安全に過ごせるためにはどのようなサポートが必要か等、熟考してプランニングしていく行程にはやりがいを感じています。
今年度は短期ボランティアとして10年ぶりにミャンマーに行ってきました。またジャパンハートを応援すべく大阪マラソンにチャリティーランナーとして参加しました。
自分の時間を調整しながら国内外での活動に参加できるのはジャパンハートならではだと思います。
▼今後の参加者へのアドバイスと、参加を迷われている方へ一言お願いします。
あの時、一歩踏み出してみて本当に良かったなと思っています。行動するにはとても勇気がいりますが、チャンスでもあると思います。10年前にジャパンハートの活動に参加した事がきっかけで、自分の可能性や人生の幅が広がったと実感しています。たくさんの経験とたくさんのかけがえのない出会いは私の財産です。自分で選択する事の責任、看護師として患者さんやご家族と向き合う事の責任、その責任という重圧から時には選択を間違った・・・と後悔する事もたくさんありました。乗り越えられなかったこともありました。でも多くの経験をしたから今の自分がいると思っていますし、それはジャパンハートの活動に参加したからこそだと、今改めて感じています。私にとって、活動に参加する事は自己研鑽となっています。臨床とボランティア活動を両立できるところもジャパンハートの魅力です。参加を迷われている方は、短期ボランティアを通して実際に現地に行ってみる事も一つですし、国内のプロジェクトに参加してジャパンハートを知る事やスタッフの方にお話を聞いてみるのもすごく刺激になると思います。
印東 真奈美様
▼ジャパンハートでの活動期間
2009年4月~2010年4月 国際看護師研修
2010年~現在 Smile Smile PROJECTボランティア
2011年3月 東日本大震災 宮城県にて医療活動
2019年9月 短期ボランティア(ミャンマー)