2020.03.30
本気で医療と向き合い、自分を見つめなおす時間
▼活動地(国内・海外)
五島列島の上五島病院
カンボジアこども医療センター
▼活動地での研修内容・経験したことを教えてください。
上五島病院
小児科・産婦人科・内科の混合病棟での勤務
カンボジア子ども医療センター
手術室での直接・間接介助
手術で使用する物品の準備(滅菌作業や器具の整理や物品の整理など)
病棟業務(患者の受け持ち、情報共有、術後患者のケア、外来患者・緊急患者の対応)
モバイルmission(地方の病院での手術活動)
クマエ(カンボジア)スタッフへの勉強会
その他(ユニフォームの管理、宿舎の管理、薬剤の整理など)
▼ジャパンハートの研修に参加を決めた理由を教えてください。
元々カンボジアの子どもたちの支援団体に入っており、いつかカンボジアで医療活動が
したいと思っていました。
看護師3年目のときにネットで「カンボジア 国際医療」と検索して最初にでてきたのが
ジャパンハートでした。内容を確認すると、前から興味のあった離島医療にも力を入れており、何より医療の届かないところに医療を届けるという理念に強く惹かれました。
私の今やりたいことが、ジャパンハートならできると確信しました。
▼参加までのハードルや解決すべき課題など(仕事・お金・家族の説得など)
国際看護師研修に参加する前は都内の総合病院に勤務していました。
スタッフの関係性もよく、楽しく働いていたので退職をすることにためらいはありました。
しかし、ここで行かなかったら一生後悔すると思いました。
金銭面でもとても不安はありました。しかし、漠然とお金はなんとかなると思いました。
お金には変えられないものがあると思っていたからなのかもしれません。
そして離島医療ではお給料がしっかり出たので助かりました。
▼言語・価値観・が違う現地の方々、また駐在している日本の医療者との活動で困ったこと、また工夫などありましたら教えてください。
私は英語がとても苦手です。現地に入るともちろんスタッフ間のコミュニケーションは英語です。最初は英語を話すことすら抵抗がありましたが、笑顔でいつも明るく接してくれる現地スタッフと一緒にいるうちに積極的に英語を話すようになっていました。
また、患者さんはクメール語しか話せないため、クメール語を一生懸命覚えました。
現地スタッフにクメール語を教えてもらい、私は日本語を教えました。そうやっているうちに日本語と英語とクメール語をミックスしてしゃべるようになっていました。
現地の言葉を使うことでスタッフや患者さんとの距離はグッと縮まります。とにかくいろんな患者さんや、スタッフとコミュニケーションをとることが楽しくなっていきました。
患者さんとクメール語で理解し合えたときはとにかく嬉しかったです。
価値観や文化の違いはもちろんあります。その価値観や文化は違うから面白いのです。
価値観、文化、言語の壁は理解したい、もっと親密になりたい、そういう想いがあれば、
関係性を築いてていくうえで壁にはならないことを私は感じました。
▼現地で医療をする楽しみ、醍醐味はなんですか?
医療に真剣に向き合えることです。
もちろん、日本にいても医療と向き合うことはできます。しかし、24時間常に医療と向き合う日々を送ることは日本にいると難しいと感じます。
カンボジアにいる間は、勤務とか休みとか関係なく常に病院で活動をしました。誰かに頼まれたからではなく、自分がしたいと思ったからしていました。もっとこの病院のために、患者さんのために自分ができることをやりたいと思いました。辛い経験もたくさんしました。日本の医療があったら助けられたのにと思うこともありました。しかし、現地でできる精一杯を私たちはやるしかない、じゃあ現地でできる精一杯って何だろう、何ができるだろう、毎日医療について、患者さんについてたくさんのことを考えました。
文化の違いを感じながら、今この瞬間にできることを精一杯やることの大切さ、楽しさ、それを感じることができました。
▼活動地での忘れられないエピソードがあれば教えてください。
私の受け持った患者さんにネフローゼ症候群の方がいました。
彼はまだ30代で子どももいました。彼の腎臓の機能はかなり低下していて、透析が必要な状況でした。しかし子ども医療センターでは透析をすることはできません。
大きな病院に行くお金も彼にはありません。
医師と相談し、様々な内服治療をし、食事療法もできる限りするように伝えました。
内服指導や食事指導をして、1度退院しましたが、1週間後にきたときにはまた状態は悪化していました。
私は彼の2回目の入院の途中で帰国となってしまいました。帰国する日、スタッフと一緒に彼も私のことを見送ってくれました。最後に見た顔は笑っていましたが、寂しいという気持ちが伝わってきました。
2週間後、一緒に彼を診ていた医師から彼が亡くなったことを知らされました。
どこかで元気になっていてほしいという気持ちがあった反面、治療に限界も感じていました。とても悲しかったし、今でも彼の笑顔で写っている写真を見るととても寂しいけど、出来るだけの治療ができたと今では思います。カンボジアではまだまだできないことがたくさんあります。その場所でその患者さんに出来る精一杯を私たちはするしかないのです。
出来ないから悲しむのではなく、出来る精一杯をする、私はそんな気持ちで彼の治療に向き合っていたと思います。
▼帰国後はどのような活動をされていますか?
帰国後の進路は帰国直前まで決まっていませんでした。
目の前のことに精一杯で中々その先のことを考えられなかったからだと思います。
しかし、ジャパンハートの国内事業のひとつであるSSPに関わりたいという気持ちはありました。なので進路相談のときに、SSPのアドバンスドナースに思い切って志願をしました。看護師研修生として1年間やってきたことを活かして、小児がんと闘っている子どもたちの力になりたいと強く思ったからです。
大変なことも辛いこともたくさんありますが、たくさんの人に支えられながら、SSPのアドバンスドナースとして生活を送っています。
▼今後の参加者へのアドバイスと、参加を迷われている方へ一言お願いします。
迷っているなら行くべきだと私は思います。
この研修では日常生活では出来ない経験をし、たくさんの人とのかけがえのない出会いがあり、一生の宝物となります。すごく辛くて、しんどいこともたくさんあります。
自分の無力さを突きつけられ、自分の未熟さも痛感します。
しかし、本当の自分と向き合うことで得られるものをたくさんあります。
私はこの研修に参加してよかったと感じています。
▼ジャパンハートでの活動期間
2018.7-2019.7 国際看護師研修51期
2019.8-2020.8(予定) SSPアドバンスドナース
▼看護師・助産師歴
看護師暦7年(2020.4)
研修参加当時は看護師5年目
小林 友恵さま