2020.04.05
常に考え、学び、その先で得る責任感と新しい経験。
活動地での研修内容・経験したことを教えてください。
・長崎県対馬病院 病棟(整形外科、眼科、内科、感染症(結核))
手術室看護師が、海外での活動で少しでも役に立つようにと手術で使用する機材の名称や使用方法、渡し方、清潔操作などを教えてくださいました。また、手術の見学もさせていただきました。
対馬には診療所がいくつかあり、定期的に対馬病院の医師が診療所で診察を行います。病院とは違い規模が小さいですが診療所の近くに住む人々にとっては必要不可欠で頼れる場所でした。
訪問看護にもご同行させていただきました。島民はほぼ高齢者であり、高齢者夫婦またはご高齢の単身で生活されている方が多くいらっしゃいます。訪問看護師は、そのような方たちの自宅へ訪問したときに話をしながら身体の変化を自然に把握したり、笑顔にしたりしていました。
対馬病院のスタッフのほとんどが島民です。ときどき患者さんが親戚だったり、近所の人だったりします。だから、より深く患者さんの情報収集ができ、患者さんが自宅へ退院する前に準備しておくことや退院後にどのような支援が必要なのかを具体的に考えることができ、その人のための退院支援を考察し、実践につなげることができます。
対馬はとても自然豊かで、空気がきれいで新鮮な魚がとてもおいしいです。とくにのどぐろがおいしかったです。私が対馬に来たのは寒い時期だったのできませんでしたが、マリンスポーツも有名だそうです。機会があれば夏に対馬へ行ってマリンスポーツをしたいです。
・ミャンマー
病棟では手術予定の患者の入院手続き(問診、手術部位の診察)、術前・術後の看護、退院前に家族へ処置の指導を行いました。主な疾患は、甲状腺腫、乳がん、鼠経ヘルニア、陰嚢水腫などですが、日本では見たことのない疾患ばかりでした。インターネットで調べたり、本で調べたり、経験豊富なミャンマー人スタッフに聞きながら勉強をしていました。入院の手続きをするときは、ミャンマー語で患者さんとコミュニケーションをとります。ミャンマー語はとても発音が難しいので、日本語が上手なミャンマー人看護師に手伝ってもらいました。研修中にもっとミャンマー語も勉強していたら、スタッフとも患者さんと意思疎通できたのではないかなと思いました。それでも、伝えたい気持ちがあれば、ジェスチャーで伝わる部分もあるので、一番は伝えたい気持ちなんだと実感しました。
手術室では、間接介助、直接介助をしました。間接介助は英語で術中記録を書いたり、外回りをしたりしました。記録は英語です。医療英語の勉強も必要です。ミャンマー人の先生とお話をするときも英語なので、事前に英語の勉強もしていたほうがいいと思いました。手術室経験は全くなかったので、1期前の研修生に教えてもらったり、ミャンマー人看護師に教えてもらったりしていました。できないなりにも一生懸命頑張ることも大切さを知りました。
・気仙沼市本吉病院 病棟(内科、終末期緩和ケア)
本吉病院はほぼ超高齢者でターミナルの方や、入退院を何度も繰り返している方が多いです。患者さんが最期までその人らしく生きていられるように、苦痛を伴わず最期を迎えられるように病院スタッフだけでなく、地域の社会福祉施設や老人ホームなどさまざまな職種の方と全員で患者さんを診ています。定期的に医療従事者をはじめ救急救命士や介護福祉士など様々な職種の方々が本吉病院に集まり、本吉地域の住民がよりよい生活を送れるためにどのようにしたらいいのかを話し合っています。医療従事者だけでなく、多職種で話し合うことでいろんな視点から良い点、悪い点が見えてくるのでこのような話し合いの場で多くの意見交換ができ視野が広がりました。
地域でボランティアコーディネートをされている方と一緒に戸別訪問をしたり、イベントのお手伝いをさせていただきました。被災して数年年月は経っているけれど、まだまだ心の傷が癒えている人は少ないです。そういった人たちと話をして楽しい時間を過ごしたり、イベントを通して社会からの孤立を極力なくすようにしていました。ここにきて震災の影響がどれほど大きかったのか、人々にどのように影響を及ぼしたのかを実際に話を聞いて少しわかったような気がしました。
気仙沼は、新鮮な魚がおいしいです。とくにサンマとメカジキがとてもおいしいです。おいしいレストランや食堂がたくさんあるので、休日には病院スタッフと一緒に食べ歩きをしました。
ジャパンハートの研修に参加を決めた理由を教えてください。
いつか海外で働きたい気持ちがあり、インターネットで様々NGO団体のホームページをみました。その中で、ジャパンハートは数日からの短期ボランティアを受け入れていたので、体験してみようと思いました。まずは、東京で行われている説明会に参加して研修生の実体験の話を聞いたり、活動の動画をみて国際看護師長期研修に参加したいと思うように鵜になり、参加を決めました。
参加までのハードルや解決すべき課題など
・仕事 多忙のためなかなか「辞めたい」と上司に相談することができませんでしたが、どうしても国際看護師研修に参加したかったので意を決して相談しました。私の上司は「いましかできないからがんばってね。」と応援してくれました。
・お金 看護師3年目の時に国際看護師研修に参加しようと決意しましたが、その時ほぼ貯金はありませんでした。1年間働き、節約しながら生活しお金を貯めました。
言語・価値観・が違う現地の方々、また駐在している日本の医療者との活動で困ったこと、また工夫などありましたら教えてください。
はじめは価値観が違う人と関わっていると、どうして私の考えがわからないのかなと疑問を抱くこともありました。でも、世界にはたくさんの人がいて私と同じ価値観を持っている人のほうが少ないと思います。だから。私はこう思うけど、そう思わない人もいるという感じで、その人の価値観を否定するのではなく受け入れていろんな価値観があるんだなと思うようにしました。そうすると、心に余裕をもって人と接することができるようになりました。自分と違う価値観の人と関わるからいろんな世界が見えるし、いろんな経験ができるし楽しく過ごせるんだと思います。
現地で医療をする楽しみ、醍醐味はなんですか?
常に考えなければならない環境であること、責任感があること、新しい経験ができること、おいしいご飯がたべられること、いろんな人と出会えること
活動地での忘れられないエピソードがあれば教えてください。
ミャンマーで活動中の6か月間は、楽しいこともたくさんあったけれど、辛いこともたくさんありました。辛いことというのは、自分があまりにも無知すぎて、何もできなさ過ぎて自分が今まで以上に大嫌いなったことです。でもそんなとき一緒にいた同期と悩みや自分の気持ちを語り合ったり、蚊に刺されながらもきれいな星空を見ながら屋上で一緒に寝たり、パゴダを見に行ったり、一緒にラペイェを飲んだりして、一緒に生活してきたからだと思います。1年間の研修を、同期と過ごしたことが忘れられないエピソードです。
帰国後はどのような活動をされていますか?
国際看護師研修にてミャンマーで活動をしたことをきっかけに、ミャンマーの雰囲気や人々が好きになり、もう一度ミャンマーで何かしたいなと漠然と考えていました。ジャパンハート関係者の方よりヤンゴン日本人学校養護教諭の求人募集のお話をいただきました。その後、学校側と面接をし、現在ヤンゴン日本人学校養護教諭として働いています。
今後の参加者へのアドバイスと、参加を迷われている方へ一言お願いします。
私は国際看護師研修に参加するという未知な世界にいきなり飛び込むことはできませんでした。海外でなにかしたいという気持ちは持っていたけれど、それ以上に不安のほうが強かったからです。それでも私は海外で活動したいという気持ちが常に心の中にあったので、思い切って短期ボランティアに参加しました。その時に私がしたことやできることは微々たるものでしたが、とても充実した時間を過ごすことができました。
迷うことも必要だと思いますが、ずっと考えていてもなにも変わらないので、まずは参加しやすい説明会に参加し、次にツアーや短期ボランティア、次に国際看護長期研修と少しずつ自分のやりたいことに向かって挑戦していくといいと思います。
堤 奈緒子様
経歴
■活動地(国内・海外)
長崎県対馬病院(国内)
ミャンマー(国外)
気仙沼市立本吉病院(国内)
■ジャパンハートでの活動期間
2016年11月 短期ボランティア参加(カンボジア)
2017年10月~2018年10月 国際看護長期研修参加
2018年11月~2019年10月 RIKAjob参加
■看護師・助産師歴 看護師歴6年