看護師
2024.09.18
家族の絆
ある日、足が痛いとOPD(外来)にやってきた1人の60代の男性がいました。
1カ月前に靴を履いていたが、釘が右足に刺さり受傷。
1週間痛みが続いていたがよくならず、2週間後にクリニックを受診したそうです。
その後もよくならなかったためJHへ来院されました。
既往には、4年前よりDMがあり内服にて血糖コントロールを行っている患者さんです。
自宅からは遠く、当院までの距離は4時間。妻と2人暮らしでアパートを借りて生活していました。子供は5人いますが、結婚し家を離れて暮らしているそうです。
セキュリティーの仕事を以前はしていたが、入院を機に退職されました。
カンボジアの病院では、基本的に家族の付き添いが必須です。
JHの病院では、病棟には1患者につき1人の付き添いとなっています。
他の病院では、付き添い人数に制限はなく、患者と家族との区別もわかりにくく、家族が床に雑魚寝している様子が日常です。
病棟に入れない家族が、病院の敷地内で寝泊まりをすることもあります。
心配でよく窓の外から病棟をのぞき込んだたり、差し入れを持ってきてくれる様子もみられます。
木と木の間にハンモックをつるしてお昼寝をしている家族。
ござを敷き、外へ出て、家族団らんで食事する風景。
外のベンチで同じ入院してる患者/家族同士で雑談している様子。
OPDで救急で運ばれてきた時には、誰が家族で知り合いか分からないほど
その人を心配して駆けつけてくれるカンボジア。
家族の愛を強く感じることが多く、その愛に心を救われたこともたくさんあります。
入院期間というものは、その人にとってその家族にとってとても大きなイベント
退院した後には生活が待っています。
家族の事情、経済的な理由にて治療を断念せざる終えないケースもあります。
家に帰って不安な中、傷のケアを続けなければいけない状況になるケースもあります。
今回のこの患者さんもそうでした。
傷の感染の状態が良くならず、足の親指を切断せざる終えない状況になりました。
手術にて足の親指を切断しました。傷が治りきっていない状況で1ヶ月ほど入院していた
その頃、家族も同じ状況になり付き添いの妻がそちらに行かなければならなくなりました。
傷も治りきっていない、感染も落ちついていない、でも帰らないといけない。
親指がなくなったことで、まだ歩くのもぎこちないのに帰って転んだりしないだろうか。
傷のケアは本当にできるのか?クリニックに通うお金はあるのか?
色んな不安を私も抱えていました。
家族の中に、クリニックを運営している人がいて病院から40分ほどの距離にありました。
そこにしばらくは傷の処置に通う方針となり退院となりました。
どうしてもこの患者さんが心配で、JHの病院から通うことができる距離であったため
訪問看護に行くことを決めました。
一緒にクマエの看護師とも同行し、薬の確認や体調のチェック、傷の処置やリハビリテーション、栄養指導を行いました。
病院の時よりも表情は穏やかで、家族と過ごせて嬉しそうな表情は今でも忘れられない瞬間です。家に訪問してさらに、この人の生活に触れることができました。退院しても、生活がある。家族がいる。大事にしたいことがある。
でも、医療も必要。家族の協力がなければ成り立たない今の現状。
それでも、この出会いを大切にしたい。できることをしたい。
そう強く感じました。
カンボジアでは、訪問看護は制度としてまだ確立されていません。
病院に通うことができればそこでの介入はできますが、まだまだ経済的に病院まで通うことができない人、病院までの距離が遠くたどり着けない人はたくさんいます。
退院しても継続した医療と届けるには、まだまだ厳しい現実があると感じます。
それでも、この出会えたきっかけを大切にし、何か力になれることはできないか、ベストな方法、決断を模索し続けること。それが私にできること。
カンボジアにおいて家族はとても大切な存在。
私も患者さんを大切にしたい。その家族も大切に思う人たちも大切にできる関わりが
できたら私も幸せだなと思います。
63期 藤澤優里花