VOICE

国境をも越えて生涯人の役に立てる偉大さに憧れて助産師になりました。
助産師になって良かったと思わない日はありませんでした。

でも、虚しく感じることもありました。医師に庇護され責任を免れていると同時に、本来助産師が持っていた力が損なわれていくような、私の憧れた助産師像が薄らいでいくような危機と悲しみを感じていました。社会の変遷に伴って助産はより医療と密接になり、その状況になかなか心が追い付いていなかったのかもしれません。なんてことを思いながら、産科と小児科の狭間で取り残される新生児の命の責任を医師に委ねる自分は、弱くてズルいと思いました。

これからも自信を持って助産を続けられるように、強くなりたくて、ジャパンハートの活動に参加しました。
現地には、医師の存在に頼らずに妊娠分娩産褥~避妊まで、自らの責任のもと全てを担う助産師の姿がありました。その技術に限らず、そんな彼女たちを尊敬するばかりです。

「なんでカンボジアに来たの?」と問われたので「過酷な環境で経験を積んで、強くなりたかったから」と答えたら「そうだね、ここには十分なものもないし人もいない、だから自分たちでやるしかないし、そのために定期的にレクチャーを受けている。だから私たちは強いよ」と教えてくれました。過酷な環境が自動的に彼女たちを鍛えたのではなく、その状況に応じた万全の備えがあるからこそ誇りをもって従事しているのだと気付かされ、安易な考えでいたことを反省しました。

彼女たちから教わることはとても多いですが、どうやら私も役に立てそうです。目の前の患者の利益になるのなら、産痛ケアをするのも三陰交を温めるのも授乳の様子を気にするのも、それが今のところ私だけでも構わないと思っています。日本人なだけで、簡単にありがたがられます。でも、自分の行ったケアに対してのリアクションはそれとはまた違って受け取ることができます。

現在、急成長しているカンボジアでは、社会の発展に伴い周産期医療の在り方もレベルも変遷しています。
それに伴い、助産師の在り方も変化しているようです。より安全性の高い母子保健が拡充し、助産と医療が密接になることでなかなか出会えなくなってしまう助産師のリアルな活動に一緒に参入できるなんて、かなり貴重な経験をしていると実感しています。御託は抜きにしても、体験はそれだけで価値があると自信を持って言えます。興味があれば、後悔はしないはずです。

助産師
三澤 結衣

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