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▼ジャパンハートに参加を決めた理由は何ですか。
私は日本の小児病院で看護師として働いていました。元々家族看護に興味がありました。しかし日本ではコロナを始め様々な感染症対策により、多くの制限を余儀なくされる環境にありました。また看護師として自己成長を考えた際に海外で看護師として活動したいと思うようになりました。ジャパンハートには小児科病棟があり実際の医療現場で活動ができること、またカンボジア、ラオス、ミャンマーでは入院時に家族が必ず付き添いを行っていることを知り、今までの小児科経験を生かしながら自分の興味がある家族看護に取り組みたいと思い、ジャパンハートへの参加を決めました。

限られた環境でも最善を――カンボジアで学んだ看護の原点

▼活動期間中に一番印象に残った出来事は何でしょうか。
現地看護師と共にPICC(薬剤・栄養剤等の注入、採血、静脈圧測定等を目的として静脈に留置するカテーテル)の感染対策に取り組んだことです。日本と比較して感染率が高く、なぜ感染率が高いのだろう、どう改善したら良いだろうと共に考えました。みんなで過去の患者さんのデータを紙カルテから収集したり、世界基準で推進されている管理方法を調べたりしました。カンボジアでは手に入らない消毒液や物品が多くありましたが、今のカンボジアで出来る方法を考え、プレゼンテーションを行いました。その後はPICCの感染がなくなり、現在も継続出来ています。

カンボジアだから、物品が手に入らないから仕方ないと思うのではなく、現地看護師と共にカンボジアで出来る最善策を考えて行動する大切さと楽しさを学びました。

▼活動で、特に困難だった点は何でしょうか。
カンボジアで活動する中で言語の違いには苦労しました。子どもや家族がどう思っているのか、このタイミングで話しかけたい、何か声をかけたいと思っても、日本語も英語も通じないカンボジアの患者家族をまえに、もどかしく悔しく、どうしたら良いのだろう、日本人の私に何が出来るのだろうと悩みました。今でも言葉で寄り添えたらと思う瞬間はあります。それでも不安なとき、辛いときはそばに行き、体をさすったり抱きしめたりすると相手も頼ってくれて、嬉しいとき、楽しいときはみんなで喜び笑い合う、言葉が通じなくてもきちんと向き合えば同じ気持ちで寄り添えると感じています。

▼活動を通じて、医療者としてのキャリアや考え方にどのような影響がありましたか?
カンボジアで活動する中で、限りある資源の中で最善を考え行動することを学びました。また文化の違いを受け入れて行動することの大切さと、その楽しさも感じました。

カンボジアでは日本より医療物品が不足したり手に入らなかったり、またジャパンハートは寄付金の中で活動させていただいています。日本ではあまり意識しない細かなことにも、コスト、安全、感染など色々なことを考慮して、どうするべきか、何か代用出来る物はあるのか考えることがあります。そのような時には根拠や目的をきちんと把握しておく必要があり、看護の基礎を改めて考えるようになりました。

またカンボジアやラオスで活動させていただく中で、それぞれ文化の違いを感じる場面がありました。働き方、考え方、生活の一部でも日本人とは異なる事があり、なぜだろうと思うこともありますが、その背景にはそれぞれの文化があり、それらを知ることはとても楽しいです。日本でも海外の患者家族を対応する事はあります。日本人の感覚とズレが生じた際には、全てを否定するのでなく相手の文化を知り、受け入れ、尊重しながら、その中でどう対応すべきなのか考えていきたいと思います。
限られた環境でも最善を――カンボジアで学んだ看護の原点

▼参加を迷われている医療者の方へ一言お願いします。
海外で活動することに対して、興味がありつつも不安を持っている方も多いかと思います。実際の現場でも、少なからず大変だと感じる事はあります。しかしカンボジア人はいつも優しく迎えてくれます、そしていつも私達を支えて下さる心強い日本人スタッフの方もいます。もし興味があれば1歩踏み出してみると新たな世界が広がり、現場でしか味わう事が出来ないかけがえのない出会いと時間、経験ができると思います。
限られた環境でも最善を――カンボジアで学んだ看護の原点

看護師
白谷 万葉