VOICE
ラオス甲状腺プロジェクト〜国や言語を越えて、寄り添う看護〜
メディカルチーム・看護師の今井絢香です。普段はカンボジアのJH病院で活動を行っています。今回は、ラオスで行われた甲状腺ミッションと小児ミッションにカンボジアから参加しました。
甲状腺ミッションは、首都ヴィエンチャンから特急列車で約3時間弱の場所にあるウドムサイ病院で行われています。3日間の手術期間で、今回は9人の患者さんの手術が実施されました。ミッション期間中は、JHスタッフとウドムサイ病院のスタッフが協力して、術前から術後ケアまで一緒に取り組みました。

その中で最も印象的だったのは、術後出血を早期発見・早期対応できたケースです。
前回のミッションで術後出血が起こった事例があり、今回から「ひも法」が本格的に導入されました。術後の観察方法をラオススタッフと確認し合いながら進め、実際に誰もがひも法を使い観察している様子が見られました。ミッション期間中に術後出血が起きた患者さんがいましたが、ひも法によって早期発見ができ、迅速な対応につながりました。この経験を通し、目でわかる指標の大切さや、現地で無理なく継続できる方法の重要性を強く感じました。

他にも、ミッション中は、ラオススタッフの通訳を通して患者さんや家族、現地スタッフとコミュニケーションをとります。英語・ラオス語・時々日本語、そしてジェスチャーも交えながら関わる中で、国や言語が違っていても「伝えたい」という思いは共通であり、その思いに向き合う姿勢は自分自身にかかっているのだと改めて感じました。


また、ラオスでも入院中の患者さんのケアは家族が行う習慣があります。家族や親戚が病院に泊まり込み、炊飯器を持参して院内の炊事場で調理をしたり、天気が良い日は外でござを広げて食事や昼寝をしたりする姿がみられました。日本では見られない光景であり、手術という非日常の中にも、ラオスの生活文化が色濃く存在していました。
日本では最新の医療機器が整い、高齢化が進む中で、命をつなぐ医療がその人らしさを奪ってしまうのでは、と葛藤を持ったこともあります。だからこそ、ラオスのように病院の中にも“日常”があり、手術という不安の大きい状況でも、家族がそばにいることで、その人らしさが守られている光景に、心が温かくなりました。

今回の手術活動を通して、患者さんが抱えていた身体的・外見的な問題だけでなく、その後の人生のQOL向上につながる一歩に関われたことを嬉しく思います。内陸国であるラオスはヨード不足による甲状腺疾患の患者が多く、今も大きなニーズがあります。JHが介入できる期間には限りがありますが、今後も甲状腺治療が現地で発展していくことを願っています。
今回の活動で得た学びや出会いを大切にし、カンボジアでの活動、そして今後の自分の人生にも活かしていきたいと思います。

看護師
今井絢香
