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スマイルスマイルプロジェクトの看護師による3か月の離島医療体験レポートをいただきました。
奄美大島にある瀬戸内町。奄美大島自体は大きいのですが、南北に長く、瀬戸内という町は南側に位置しています。
こじんまりしており、静かな町の一角に瀬戸内徳洲会病院があります。

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スマイルスマイルプロジェクト看護師の川原です。
ジャパンハートの国内事業として、小児がんの子どもと家族の旅行に医療者が付き添う本プロジェクトに、看護師として関わり3年目を迎えた10月、奄美大島にある瀬戸内徳洲会病院へ3か月間の出向となりました。

ジャパンハートに入職してからの3年間、小児がんの子どもたちがご家族と大切な思い出の時間を過ごせるよう、活動に一生懸命取り組んできました。また、能登半島地震の際には避難所支援に入るなど、看護師としてできることに幅広く関わらせていただきました。

看護師になってからの7年間、クリティカル領域、緩和ケア、在宅医療、災害医療、小児がんの子どもの外出支援など、さまざまな領域を経験してきました。多くの経験を積むことができたのはとてもありがたいことで、どの看護にも魅力を感じ、「自分が専門としたい領域」について、ずっと迷いを抱えていました。

そんなとき、吉岡先生から「困っている離島の病院の力になってくれないか」と声をかけていただきました。何か自分にできることがあるなら、この迷いに答えを出せる出会いがあるかもしれないと思い、出向を希望しました。

3か月間離島医療を経験し、迷いながらも「行く」と決めて本当によかったと、今は強く感じています。
私が離島医療を経験してよかったと思う理由は、大きく以下の3つがあります。

1.年齢も経験も異なる看護師の仲間が全国にできた
2.自分が何を大切にしたいのか見つめ直すことができた
3.看護の良さ、ジャパンハートで身につけた看護の視点を再認識できた

ここからは、この3つについてお話ししたいと思います。

1.年齢も経験も異なる看護師の仲間が全国にできた

10月の奄美大島は、セミが鳴き、まだ夏のような気候でした。
空港から瀬戸内徳洲会病院までは2時間半。病院から徒歩5分の寮に到着し、青い海を見てうれしくなる一方で、急に寂しさを感じました。

↑奄美大島の海

出向が決まってから「何とかなるだろう」と思って来た奄美大島でしたが、新しい環境や人間関係への不安を、改めて強く感じました。

不安を抱えたまま迎えた勤務初日。3年間病棟から離れていたこともあり、立ち回りが分からず、病棟を右往左往していました。そんなとき、「どこから来たんですか?私も先週から応援に来てます。3回目なので、何でも聞いてくださいね!」と声をかけてくれたのが看護師のAさんでした。

この日をきっかけに、Aさんとは近くの島へ出かけたり、星を見に行ったり、レンタカーをシェアしたりする仲になりました。

瀬戸内徳洲会病院には全国から期間看護師が集まっており、分からないことを聞きやすい雰囲気がありました。地元の方や看護助手さんも含め、新しく来た人を気にかけてくださる温かさがありました。
看護師同士は年齢や経験もさまざまですが、「離島医療は初めて」という方が多く、同じ困難を乗り越える仲間として、すぐに打ち解けることができました。

Aさんは離島・へき地応援を13回経験された大ベテラン。病棟での立ち回りだけでなく、看護師として、また一人の女性としての生き方についても意見を交わしてくださり、3か月間多くの学びを得ることができました。

任期を終える際、「これからも長い人生が続くから、帰ってからもいつでも会おうね」と言葉を交わしてお別れしました。
Aさんをはじめ、全国からの期間看護師さんたちとの出会いは、私にとって一生の宝物です。

↑看護師仲間と

2.自分が何を大切にしたいか見つめ直す時間

離島での最初の1か月は、怒涛のように過ぎていきましたが、とても心細く、時間が長く感じられました。
2か月目に入ると、慣れない土地での生活にも少しずつ慣れ、一緒に頑張る仲間との楽しみも増えてきました。

そんなある日、喫茶店を訪れたときのことです。店主の女性と2人きりだったため、島に来た背景についてお話ししました。楽しい時間を過ごし、帰ろうとしたとき、「1曲聴いていかない?」と、地元の方の歌をかけてくださいました。

「あなたの毎日が しあわせでありますように
今は一緒に いられないけれど」

その歌詞を聴き、店主さんの温かい思いに、思わず涙がこぼれました。

「あなたのおかげで島の人は助かるけれど、大切な人たちからは離れなきゃいけないね。あなたに届いてよかったわ」と、店主さんも涙を流しながら、そばにいてくださいました。

離島で過ごした3か月は、普段そばにいてくれる人や、当たり前の生活が、どれほど大切なものかを改めて気づかせてくれる時間でした。

↑素敵な出会いがありました

3.看護の良さ、ジャパンハートで身につけた看護の視点を再認識できた

瀬戸内徳洲会病院は、奄美大島の南端地域の医療を担っており、急性期疾患から慢性疾患、レスパイト、緩和ケアまで、さまざまな状況の患者さんを受け入れています。

多様な背景をもつ患者さんを受け持つ中で、多重課題に直面し、業務をこなすことに精一杯で、できない自分に落ち込むこともありました。それでも、患者さん一人ひとりの個別性に合った看護を行いたいという視点を持ち続けられたのは、スマイルスマイルプロジェクトでの経験があったからだと感じています。

医療機関から離れて不安を抱えるお子さんとご家族の安全・安心のために必要なことをアセスメントし、スタッフでカンファレンスを行い、個別性に合わせた看護を考えてきた経験は、小児と成人という領域を越えて、患者さんの入院生活を支える看護の軸になっていました。

また、できない自分に落ち込んだときに支えとなったのは、患者さんとの関わりでした。

「はげー、内地から来たの?きゅらさね~。あたしのところに来たときは、ゆっくりしておいでね。」
「看護師さんの声と笑顔で、患者は安心できるのよ。大変なときも、いつも笑顔でいてね。」
島の患者さんの温かい言葉に、何度も助けられました。
※「きゅら」:奄美地方の方言「かわいい」「大切で愛おしい」という気持ちを含んだ言葉。

看護師は人を助ける仕事だと言われますが、同時に人にたくさん助けてもらう仕事でもあるのだと感じます。

島の患者さんのご年齢を聞くと驚くことも多く、90~100歳代の方もいらっしゃいました。大島紬の織り師をされていた方もおり、島の暮らしや文化についてお話を聞く時間は、とても楽しいものでした。
長く生きてこられた方の人生に触れられることも、看護師という仕事の魅力の一つだと感じます。

100年近く奄美大島を守ってこられた高齢者の方々を看護するなかで、内地から来た私にも安心して看護を任せていただけるよう、地域の文化を理解し、方言を使った声かけを意識するようになりました。
言葉や文化を大切にすることで、患者さんとの距離が少しずつ縮まっていくことを実感しました。

地域の文化やその方の歩んできた人生を理解したうえで看護を行うという視点は、スマイルスマイルプロジェクトに戻った際にも、お子さんとご家族のこれまでの背景や思いを理解し、寄り添う看護として生かしていきたいと考えています。

私は今回、多くの方に支えていただきながら、瀬戸内徳洲会病院での3か月間の出向を終えました。
これからも「患者さんが病気と向き合う日々を、人生の一部として大切に過ごすことができる」よう、看護師として歩み続けていきます。

↑患者さんと共に

スマイルスマイルプロジェクト セクション看護師 川原

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2026年1月よりRIKAjobでは、離島やへき地(登録医療機関あり)の医療機関で働き、経験を積みたい看護師と病院をつなげています。地域の医療に貢献しながら、自分自身と向き合える機会をを希望される方は、お気軽にご相談ください。
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