VOICE
カンボジアの手術室で働いて感じたこと
手術中の患者さんの体位を調整することは、手術室看護師にとって重要な役割の一つです。麻酔によって苦痛や不快感を訴えることができない患者さんに代わって、術野を妨げないようにしながら、安全で、できる限り安楽な体位に整えます。
日本で働いていた病院では、除圧や皮膚を保護するための物品は、素材や形、大きさなど、さまざまな種類が揃っており、そのたくさんある中から選ぶことができました。
一方でジャパンハートの手術室では、その物品は限られています。しかし、良いものがないからといって、妥協するわけではなく、今あるもののなかで最適な組み合わせを考えて、それを自分たちで試して、実践しています。また、ポジショニングや除圧のためのクッションや、安全のための保護帯など、必要なものは自分達で手作りして使っています。

↑大判のガーゼに薄いスポンジ、気泡緩衝材を巻いて、体位調整用のクッションを作成。スポンジや気泡緩衝材は器材保護などで使われていたものが不要になったため再利用。

↑手や足を固定するための安全帯
現在、手術中のガウンやドレープ等は布製で、洗浄・再滅菌して使用していますが、何度も使っていると劣化して、穴が開いたり破けてしまいます。穴が開いたものは縫って再利用できますが、劣化して破けてしまったものなどは、形を変えて再利用します。それも使用できなくなったら、最後は細くしたものを紐として使ったり、小さく切って雑巾として最後まで大切に使っています。以下、実際に使用している様子です。

↑手術のためのガウンやドレープは洗浄・乾燥が終わったあと、病院の掃除担当のスタッフが一つ一つ丁寧に畳んでくれます。それを、手術前日に手術室看護師が、手術に合わせてサイズや数を選択し、布で包んで滅菌にかけて準備します。

↑器械台やガウン、手術野のドレープ。手術中に実際に使用している様子。
なければ作ればよいし、合わなければ合う形に作り変えればよいというような考え方を、カンボジアスタッフはさまざまな場面でみせてくれます。その柔軟な発想におもしろさや驚きを感じながら、日々過ごしています。一つの道具が一つの役割をするのではなくて、「あれもできるしこれもできる」「こうやって使ってもいいんだよ」というような柔軟な考え方が、「こうあるべき」「こうしなければいけない」と考えてしまいがちなわたしの頭を少しずつ柔らかくしてくれているように感じています。
体位のことに限らず、様々な場面で「日本ではどうやってるの?」と聞かれることがあります。新しいことを始めたり、今までやってきたことを変えるのは、不安や怖さも伴って簡単なことではないと思います。
それでも、良いと思ったことや、勉強会などで新しく得た学びをすぐに取り入れて、「とりあえず一回やってみよう」と行動する姿勢はすごいなと感じると同時に、見習いたい姿勢だと思いました。こうした日々の積み重ねの中で、私自身も、今よりもっと良くなるためにできることを考え続け、新しいことを吸収しながら、成長していきたいと思います。
看護師
宮永葉月
