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私は2025年11月より、メディカルチームとしてカンボジアで活動している助産師です。ジャパンハートが掲げる「すべての人が、生まれてきて良かったと思える世界を実現する」というビジョンに共鳴したことが、参加を決めた理由の一つです。
このビジョンの根幹には、人生のスタートラインである「誕生」の安全と尊厳があり、その土台を支える助産師はジャパンハートにとって欠かせない存在だと考えています。
そこで今回、ジャパンハートの助産師活動に興味をお持ちの方や、参加を迷われている方の背中を少しでも押すことができればと思い、私のこれまでの半年間をご紹介します。
カンボジアでの半年間―助産師として見つめた現場とこれから
〇~1.5カ月目
ジャパンハートの全体像を把握し、スタッフとの関係を構築するために、助産師も最初の 1~1.5 カ月間は一般成人の看護業務に従事します。業務内容は他の看護師と同様、病棟だけでなく外来も担当します。
私が外来を担当する中で、乳腺炎の方が来院されることがありました。乳腺炎は助産師のケアにより改善できる可能性があるものの、私が出会った症例はいずれも介入がないまま外科的処置が行われた後であったため「何かできることがあったのではないか」と悶々とすることがありました。
ちょうどその頃、ジャパンハートの乳がん検診チームがヘルスセンター(診療所のような施設。以降、HC)での活動を予定しており、乳房に関する訴えをされる方の中に乳腺炎の方もいるのではないかと考え、市場調査およびケアの実施を目的に同行させていただきました。
実際に、受診者の中には乳腺炎の兆候がある方もいましたが、HCの助産師は「乳腺炎は知らないし、見たこともない」と話しており、医療者における疾患認知が十分ではない現状を痛感しました。同時に、知識とケアの普及の必要性を実感しました。
カンボジアでの半年間―助産師として見つめた現場とこれから
〇1.5~3カ月目
2024年8月以降、常勤産科医の不在に伴い、ジャパンハートの周産期事業は行われていません。そのため現在、助産師は隣接する国立のポンネルー病院(PL)での活動が中心となっています。
PLは近年のカンボジアの急速な発展やこれまでの ジャパンハートの継続的な介入により、医療の自立が進み、医療安全への意識も高まっています。一方で、ヒヤリハット事例が少なくないのも現状です。このため現地助産師と協働しながら、医療とケアの質の向上を図っています。
また、産後入院というシステムが導入されて日が浅いこともあり、産褥期看護には課題が残ります。家族からの訴えで哺乳不良による児の低血糖が発覚したり、乳房トラブルで苦しむ褥婦さんに出会うことも少なくありません。
こうした現状に対し、まずは私たちが観察やケアを実践し、トラブル時は現地助産師に共有して「共に考える」姿勢を重視しています。試行錯誤の毎日ですが、産褥期看護の大切さを伝えていけるよう活動を続けています。
カンボジアでの半年間―助産師として見つめた現場とこれから
〇3~4カ月目
ジャパンハートとPLともに24時間体制で手術室スタッフが常駐しているわけではありません。そこで、もし緊急帝王切開が必要となった際、助産師が手術室の一員として動ければ、一刻も早く帝王切開ができ、母児の死亡率の低下に繋がるのではないかとの考えから、ジャパンハートで手術室看護のトレーニングを行いました。
日本でも未経験の領域を外国語で学ぶのは想像以上に大変でした。しかし必死に食らいつく1カ月の中で、自分が手術室を稼働できる状態まで立ち上げられるようになったことで、少しでも救命に貢献できる機会が増えたことは、助産師として素直に嬉しいです。
カンボジアでの半年間―助産師として見つめた現場とこれから
〇4カ月目~現在
様々な場所でカンボジアを多角的に見つめることで、潜在的なニーズを捉えていく期間となりました。現在は、PLで現地助産師と協働しつつ、これまで見てきた現状を整理しながら、次の活動に向けた準備を進めています。
ジャパンハートの助産師の活動には決まった枠組みがありません。「待ちの姿勢」では役割を見いだしにくい環境であり、ゼロから活動を創り出すことはチャレンジでもありますが、一方で、自分の努力次第でどんなことにも挑戦できる環境です。

ここからは見出したニーズの充足に注力し、「生まれてきて良かったと思える世界」の土台を築けるよう精一杯頑張ります。
私の半年間の活動についてお伝えすることで、現地の活動をイメージする一助となり、一歩踏み出そうか迷っている方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。
カンボジアでの半年間―助産師として見つめた現場とこれから
助産師
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