VOICE
【災害支援・対策(iER)】熊本支援を通して
到着時
正直なところ、避難所に足を踏み入れた瞬間、「発災から50日以上が経過しているにもかかわらず、まだ多くの方が避難所での生活を続けているのだ・・。」と感じました。発災 から50日以上が経過し、もうすぐ2か月を迎えようとしている時期に、私はジャパンハート医療支援チームの一員として避難所に入りました。最近は、メディアで熊本地震の情報を目にする機会も少なくなっており、時間の経過とともに、 被災地の生活も徐々に落ち着いてきているのではないかと、どこかで漠然と考えていました。 しかし、実際に避難所を訪れると、1歳の子どもから高齢の方まで、家族で生活されている方、独居の方など、さまざまな背景を持つ方々の生活が、一つの建物の中に集約されていました。実際の避難所での生活を目の当たりにし、発災から時間が経過した後も、避難生活を続けている方々が多くいることを改めて実感しました。
活動開始1日目
翌日から、本格的な活動が始まりました。今回は仕事の休暇を利用しての参加だったため、限られた活動期間の中で、自分にできることを一つひとつ行っていこうと考えていました。 活動は、医療・福祉面で支援が必要な方々へのラウンドから始まりました。 前日から体調不良を訴えていた高齢女性への対応をはじめ、避難されている方々の体調確認や、入浴時の見守りなどを行いました。普段の臨床現場とは異なり、医療的な情報だけではなく、避難所での生活環境や、その方がどのように生活しているのかを含めて観察する必要がありました。また、限られた環境の中で、安心して生活できているかという視点も重要だと感じました。避難所はあくまでも「生活の場」であり、主体となるのは避難されている住民の方々です。そのため、医療者としてどこまで介入することが適切なのか、また、どの段階で支援が必要なのかを見極めることが重要だと感じました。この「支援する側がすべてを担うのではなく、住民の方々の生活を尊重しながら必要な支援 を行う」という感覚は、普段の臨床現場とは異なるものであり、災害現場での経験を通して身につけていくものなのだと感じました。
活動2日目
熊本は9月とはいえ、まだまだ暑く2日目も晴天で気温が上がりそうな一日でした。午前中は、要支援者のラウンドから始まりました。ラウンドの合間には、薬を適切に管理できるよう、お薬カレンダーを作成しました。

↑他の入居者さんのお薬カレンダーを参考に作成しました。くまモンが描けるようになりました。
ジャパンハートの救護スペースで作業をしていると、「何作っとると?」と入居者の方が話しかけてくださり、そこから自然と雑談が始まりました。何気ない会話を交わしながら、穏やかな時間を過ごすことができました。 ラウンドの際には、地元の盆踊りを手拍子しながら歌ってくださる方もおり、いつの間にか熊本弁講座が始まる場面もありました。私も故郷の阿波踊りの手さばきを披露し、お互いの地域の文化を紹介し合うような、楽しい交流となりました。
こうした何気ない会話や交流を通して、生まれ育った土地への愛着や、そこで築いてきた人とのつながりを垣間見ることができたように思います。災害によって住み慣れた場所での生活が大きく変わってしまったとしても、できることなら、住み慣れた土地を離れることなく、これまで慣れ親しんできたコミュニティとのつながりを守りながら、少しずつ生活の再建が進んでいってほしい。そんな思いを抱きました。午後は、体調不良の方への対応に追われました。連日のように夕方になると突然の高熱や嘔吐がみられていました。 熱型や経過から、何らかの疾患が隠れている可能性はないか、また他の症状から考えられることはないかなど、さまざまな可能性を考えながら観察しました。2日前にはかかりつけ医を受診していましたが、その後も回復の兆しが乏しく、心配な状態でした。
ちょうどその日に日本赤十字社のチームによる巡回があり、診察を依頼することができました。そこで情報共有を行い、連携して医療につなげることができたことで、重症化する前に対応できたことに安堵しました。
病院とは異なり、災害現場では検査や医療機器など、得られる情報が限られています。 そのような環境の中で、限られた情報からさまざまな可能性を考え、必要な支援につなげるために迅速に判断していくことの難しさを実感しました。一方で、医療者だけで完結するのではなく、他の支援チームや地域の医療機関と連携しながら支援につなげていくことの重要性も学んだ一日でした。
活動最終日~活動を終えて
最終日の夜は、オンコール対応でした。幸い夜間の呼び出しはなく、待機室で仮眠をとることができました。 避難所のすぐ隣の建物に、必要時にはいつでも駆けつけることのできる医療従事者が待機しているということは、避難所で生活されている方々にとって、大きな安心につながるのではないかと感じました。
今回の活動を通して、発災直後から今日まで、支援が途切れることなく続けられてきたことにも改めて思いを馳せました。ジャパンハート職員の皆さんをはじめ、ボランティアとして支援をつないでこられた方々、そしてさまざまな形で活動してきた支援団体の皆さんの積み重ねがあって、現在の支援体制が成り立っているのだと思います。 避難所の設営や一日の生活の流れも、これまでの災害支援で培われてきたノウハウや知恵が生かされ、少しずつ形づくられてきたものなのだと感じました。
先発隊として入った方々をはじめ、発災から今日に至るまで、一人ひとりがその時々にできることを積み重ねてきたからこそ、今の支援につながっているのだと思うと、長期間にわたって支援を続けてこられた方々に、改めて頭が下がる思いでした。 今回の活動を終えて帰京した後、まずは自分の身近な人たちに、熊本の現状を伝えたいと思いました。
そこで、職場に熊本のお土産とともに、今回の活動について記したものを置きました。 すると、職場の皆さんから「まだ避難生活を続けている人たちがいるんだ」と声があり、そこで初めて、発災から時間が経過していても、今なお避難生活を余儀なくされ、大変な思いをしている方々がいることを知った人もいました。自分が実際に現地へ行き、見て、感じたことを伝えることも、支援の一つなのかもしれないと感じました。

↑お土産と一緒に自身の活動内容を紹介しました。
避難生活は、まだまだ続いていくことが予想されます。 今後、支援は少しずつ統合されたり、縮小されたりしながら、その時々の状況に応じて形を変えていくのだと思います。 それでも、避難所で出会った方々をはじめ、熊本で大変な思いをされている方々が、一日も早く安心して生活できる日を迎えられること、そして健康に過ごしながら、それぞれの生活を再建していけることを願っています。そして今回、支援する側として被災地に入りましたが、いつ、自分自身が災害に遭い、支援を受ける側になるかは分かりません。災害は誰にでも起こり得るものだからこそ、「困ったときはお互いさま」という気持ちを持ち、支え合える社会であってほしいと思います。 今回の経験を一度きりのものにするのではなく、これから自分に何ができるのかを考えながら、日々の生活や仕事の中でも、誰かの支えになれることを少しずつ積み重ねていきたいと思います。
看護師 S・Y
iERでは災害時に一緒に活動していただけるボランティアを募集しております。
説明会等も実施しておりますので、ぜひご確認ください!
▸ https://japanvolunteer.org/event/2026aw-ier-training
