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アジア開発途上国、日本の離島・へき地で活躍するメディカルチームの
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看護師

2023.03.03

受け持ち患者を通して知ったカンボジア人の生活環境と看護の難しさ

カンボジアに来て半年経った頃、1人の患者さんを受け持った。

脳梗塞の患者さんだ。

日本ではよく見る疾患。
なんの違和感もなくその疾患名を見ていたが、そういえばカンボジアに来て、脳梗塞の患者さんはこの症例が初めてだなと不意に思った。
カンボジアでも日本と同じように糖尿病や高血圧の患者はたくさんいる。
でも、なんで脳梗塞の患者を看る機会がなかったのだろう。
その疑問から受け持ちはスタートした。

患者の容態は、右半身麻痺があり端座位の保持はできない。そして嚥下障害を伴っていた。
その患者にとって今できる最善の看護、そして家に帰るためにはどうしたらいいかを必死に考えた。

日本では、患者をサポートする医療従事者がたくさんいる。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士そして地域連携など病院にいれば様々なサポートを受けることができる。また退院となっても、リハビリ専門病院への転院や訪問看護、施設への入居や通所などのサポート体制を整えて退院となる。

しかし、カンボジアでは医師と看護師のみ。そして帰る場所は自宅のみだ。サポートしてくれる制度や機関もほぼない。

情報収集を進めると患者の親族は妻のみ。サポートしてくれる親族はいない。
また自宅は高床のみで、屋根はあるが壁はない。
キッチンは火鉢。風呂は、水をためてそれで体を流す。

え。ちょっと待って。高床のみ?ベッドは床。家?え。???

今までカンボジアの人がどんな家に住んでいて、どんな環境で生活しているのかどのような場所に帰っていくのか考えていなかたことがよくわかった。

ここは日本じゃないんだ。

カンボジア人看護師のサポートを受けながら、日常生活について情報を集め、家に帰るためにはどのような事が必要なのか、日本人看護師カンボジア人看護師とそれぞれの知識や情報を元に病棟全体でサポートしていった。

受け持ち患者を通して知ったカンボジア人の生活環境と看護の難しさ

そして患者退院の日。
病棟全員のサポートのおかげで無事自宅に退院することができた。
退院時、カンボジア看護師と一緒に自宅訪問を実施した。
妻も患者も自宅に着くと笑顔だった。
自宅動線や自宅で快適に過ごすためのサポートを実際に行った。
ないものはみんなで作成した。
病院で実施していたリハビリも自宅で実施できるようにパンフレットを作成し渡した。

受け持ち患者を通して知ったカンボジア人の生活環境と看護の難しさ

この患者にとって充分な看護ができたかはわからない。
私が担当じゃなかったらもっとADLがアップして自宅に帰れたかもしれない。
もっとできることがあったのではないか。

考えれば考えるだけ不安になるし、これでよかったのかと考える日々。
しかし、自分にできることを精一杯全力でやる。今はそれに尽きる。

受け持ち患者を通して知ったカンボジア人の生活環境と看護の難しさ

後日患者が外来診察に訪れた。
患者は松葉杖を使いながら妻のサポートにて歩くことができていた。妻も患者も笑顔であった。
カンボジアは日本のように保険制度もなく、退院後のサポート体制もほぼない。
脳梗塞になってもリハビリを継続的に実施したり、医療のサポートをしてくれるところも少ない。
お金がなければ薬も買えない。これが現状である。
入院しても、特にする治療がなければ退院となる。

受け持ち患者を通して知ったカンボジア人の生活環境と看護の難しさ

私たちにできることはまだまだたくさんあると感じた。
しかし、カンボジアという環境や文化、そしてその人の個別性を考えた看護。
日本で行なっていたこと以上のことを求められ考えさせられる。
そして結果は患者さんが返してくれる。

単純のようだがこれが難しい。
看護師として人間として成長しているか実際わからないが、日本で看護していた時以上に色々なことを色々な立場から考える能力が必要である。

あと半年。立ち止まらずに、自分の道を切り開き1歩でも半歩でも前に進めるように前進していきたい。

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