メディカルチーム医療者ブログ

国際医療の現場で活躍するメディカルチームの看護師・助産師・医師・コメディカルたちが
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看護師

2024.08.20

「目の前で患者さんが亡くなっていく」

それは医療者であれば誰しも経験する可能性があることだと思います。
しかし、カンボジアと日本では、この状況には大きな差があると感じました。

私はJHCMCから車で2時間ほどのチャムカルー病院という現地の病院でのひとりっ子活動中に(現地の病院に日本人1人で滞在し、術後フォローや現地での医療活動をする活動)、ある交通外傷の患者さんの救急搬送に同行する機会がありました。

ジャパンハート メディカルチーム看護師

意識レベル3桁、左上下肢の裂傷がひどく出血量も多い。
また、頭部に膨隆を認められ、脳内の局所病変があると考えられました。

日本であれば、すぐに救急車を呼び、治療ができる病院に搬送できるネットワークが確立しています。
私が活動していた病院では、CTなど必要な検査や高度な治療を受けられる設備もないため、すぐに他の病院へ搬送することが決まりました。

ジャパンハート メディカルチーム看護師

しかし、ここにはAEDや挿管物品だけではなく、バイタルサインを測るモニターすらもありません。
また救急車も、ただ酸素ボンベがあるだけで、日本のように救急隊がいるわけでもありません。

カンボジアでは搬送の際、医療者は助手席に乗ることが一般的であるため、一緒に同行した現地の病院の医師は助手席に座っており、救急車内は私と患者さん、3人の家族のみの空間でした。
自分の大切な家族の変わり果てた姿を見る動揺と心配が大きい中で、クメール語が通じない日本人が同乗していても、さらに不安感を強くさせてしまうのではないかと、私自身戸惑いもありました。

しかし、そんな中でも家族は涙ながらに微笑み、「ありがとう」と日本語で言ってくてれたことが今でもとても印象に残っています。

どうにか間に合って欲しい。搬送中の2時間が4時間に感じるほど、すごくすごく長い時間に感じました。
圧迫しても圧迫しても止まらない出血。

徐々に患者さんの状態が悪化し、下顎様呼吸となり、心肺停止状態となってしまいました

搬送先の病院まであと1時間近くかかる。
激しく揺れる車内で有効な胸骨圧迫を続けることもできず、最後はただ到着を待つことしかできませんでした。

亡くなっていく患者さんに対して何もすることができず、それを悲しむ家族の背中をさすることしかできない。
自分の無力さを痛感すると共に、これが今のカンボジアなんだなと強く実感させられる経験でした。

ジャパンハート メディカルチーム看護師

無免許でバイクに乗ることができるカンボジアでは交通事故による救急搬送が本当に多いです。
しかし、地方の病院から大きな病院までの道のりは遠く、助けられるはずの命が助けられない現状がまだまだ当たり前のようにあることを知りました。

自分がこの現地の病院の一員であると考えた時、この病院のため、この地域の患者さんのために何ができるのか、
そう考えた時、私にできることは、どうしたら命を繋ぐことができるかを考え行動することだと感じました。

そのための1歩として、現地の病院でBLSの知識と技術の定着を進めていきたいと考えます。
時間がかかることかもしれない。私にできることは“1”にもならないかもしれない。

しかし、他の連携病院では、すでにJ HによるBLSレクチャーを実施した後、実際に有効的なBLSが実施されたことで患者さんが助かったという話を日本人の仲間から聞きました。

考えるだけではなく、行動すること。

必要性を理解してもらうこと、様々な人に協力してもらうこと、それを継続させること。
そしてそれが決して押しつけにならないこと。
一つ一つのステップに課題が山積みですが、ニーズのある病院に対して継続したアプローチができるよう、行動レベルに計画をして取り組んでいきたいと思います。

先日、初めてウドン山へ朝日を見に行ってきました。
1年半の活動を終える大切な仲間、日々一緒に喜怒哀楽を共にする大切な同期、私たちの活動を支えてくれる大切なスタッフやインターン

みんな色々な思いを抱えてここにいるんだなと、なんだか胸が熱くなりました。
毎日が刺激的でジェットコースターの様に色々な感情になるこの環境がとても楽しいです。

ジャパンハート メディカルチーム看護師

63期 中村砂織

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