看護師
2024.10.17
カンボジア人の優しさとしなやかさ
前回からの続き(前回はこちら)
この患者さんの対応の前から一つ取り組んでいたことの中に、「8th Annual Asia Pacific Conference on Early Mobilization and Rehabilitation in ICU」という学会での発表準備がありました。
日本でICU経験を重ねる中で持った興味や取り組み、その中でできた色々な方との繋がりが、この機会を与えてくれたと感じています。
ジャパンハートでの活動も含めた発表にすることは決まっていました。
そしてその原稿を作っている時に、この患者さんの事例がありました。
カンボジアの医療を通して、今回のような差や違いを多く感じるとの同じくらい、魅力も感じます。
家族同士のつながりの強さ。
入院に付き添う同室の家族同士が支え合っている姿。
今回の患者さんを通しても、この様子に励まされたり、気持ちを奮い立たされたりしました。
入院中、生活の援助の中心が家族である文化だからこそ生まれていると感じる、家族(時に患者さんも)が医療者の実施するケアへ自然に介入してくれる姿。
例えば、術後の帰室時のストレチャーからベッドへの移乗、日々の病室内の掃除、年末にベッドやマットを外で丸洗いしているときに手伝ってくれたこと。
裸足で外に出てハンモックやゴザの上でくつろぐ姿。
敷地内を犬やニワトリや牛が闊歩する光景。
現地の方にしてみれば当然のことなのだと思いますが、私にとっては日常を医療現場に持ち込める環境、その自由度の高さがとても新鮮で、
日本のよく言えば整っている、けれど制限が多く、どこをとっても非日常な入院環境との違いに羨ましさも感じます。
高齢化の進む日本と人口の平均年齢が26歳のカンボジアでは、入院患者さんの年齢層にももちろん差があります。
しかし、大部屋で仕切りもなく、男女や年齢で分けることが難しい中で、せん妄や点滴等の自己抜去をほとんど見ることがないことには、いつも驚かされます。
プライバシーがなくストレスを感じている方はもちろんいます。
しかしこの環境の中で周囲にも気を配って療養生活を送るカンボジアの患者さん、ご家族を見ていると、優しさとしなやかさを感じます。
看護師62期
関山 弘子
~次へつづく~