VOICE

 震災から2年と少し、約1年ぶりの活動参加というタイミングで能登に行かせてもらう機会を得た。前回までは住民さんのセルフケアを高めるためにおしゃべり喫茶という空間をつくることで、ジャパンハートと住民さんとが関わりを持つ場ができていた。今回からはお元気クラブという名前にかわり、住民さんの健康をよりよい状態にもっていくためのアクティビティ自体に意識が置かれている。健康チェックをより踏み込んで行うために医師として活動に参加した。

 

 医師のなすべきこと、といえば一般的には何らかの症状に対して病気を診断し、治療することが一番にあげられるのではないだろうか。もちろん予防医学という公衆衛生領域や早期発見の健診事業など医師が関わる領域は他にもある。先天性障害や慢性医療など人の一生涯に関わっていく領域もある。これらの役割を一手に引き受けて行っているかかりつけ医もいるだろう。それではジャパンハートの一員として関わる災害医療とは一体何か。それは究極の予防医学の実践ではないだろうか。災害発生の超急性期や急性期においては外傷などに対する救急医療がまずは求められる。しかし、急性期から慢性期にかけての避難所や仮設住宅での中長期的支援においては、病気にならないように支援していくことが重要だと感じた。あくまでも慢性期の活動経験しかない私自身が感じたことなので異論はあるだろう。しかしながら誤解を恐れずに極端な表現をすれば、避難生活が病気をつくってしまう面があると感じている。医師として医療機関で病気の治療に当たってきた身としては、病気を治療するよりも健康状態を維持するほうが明らかに誰にとってもハッピーだ。病気に関して様々なエビデンスが出てくる現代だからこそ、その知見をいかして個々の住民さんの生活に即した健康指導をそれとなく行えたらどれほど効果的だろうか。医療者が病院から飛び出て実際の生活の場で活動する醍醐味はそういうところにあるのではないか。できるだけ病気にならないという目標にアプローチしていくことに可能性を感じたし、やりがいを感じられるかもしれないと思った。

 

 蛇足ではあるが、iERボランティアになったこともあり、今年の日本災害医学会に参加した。教育講演や防災庁設置に関するセッションなど、とても興味深いものだった。学会参加を勧めていただいたiERスタッフに感謝している。災害医療は平時の医療の延長線上にあり、災害が実際に身近で起こったならば誰一人無関係ではいられない。医療における視野も広くなるので、災害に対する関心を周囲に広げていきたい。最後に、復興の力の源は地域の連帯にあり、と感じたことをお伝えして活動報告とさせていただく。

 

iERボランティア医師 Y.O.