VOICE

「災害支援とは何なのだろう」。今も私は問い続けている。

 

2026年7月に発生した熊本地震の支援として、8月31日から9月4日までの5日間、八代市の避難所で活動した。初めての避難所支援に、緊張と不安を抱えて現地に入った。

 

避難所には、屋外に移動式トイレカーやシャワー用テント、ホールにはテントとベッドが整然と並び、約70人が生活していた。医療・福祉職をはじめ、多くの支援者が集まり、それぞれの専門性を生かして避難者の暮らしを支えていた。中には、被災しながらも支援側として活動する歯科衛生士の方もいらっしゃった。それでも、みな笑顔で暮らしていた。

私はジャパンハートの一員として、ラジオ体操や入浴介助を行った。それもその人らしく過ごすための大切な生活の一部である。

 

ある避難者の方が、「ここは地震が多いけど、ここにいるしかない。ここに嫁いだんだ。ここにいる。」と話してくださった。その言葉には、この土地で暮らし、家族をつくり、長い年月を積み重ねてきた人生が込められていた。ここで必死に暮らしてきた唯一無二の人が目に前にいるんだと、存在そのものに強く心を揺さぶられた。

私が大切にしているのは、「その人の日常、その人が大切に作り上げてきたあたりまえを、あたりまえのままに。そのお手伝いをしたい。」という思いである。災害は、家、家族や友人との暮らし、地域とのつながり、あたりまえの日常を一瞬にして奪う。だからこそ、命だけでなく、その後の生活を支える視点が必要なのだ。

 

現地にいたのは5日間。失われたものを元に戻すことはできない。それでも、身体を動かす、入浴する、話す、笑う。その一つひとつを支える意味がある。避難者の方々の笑顔は、悲しみや不安がなくなったから生まれたものではない。さまざまな思いを抱えながらも、人と話し、笑い、身体を動かし、今日という一日を暮らしていく。その笑顔には、今を生きるための力や、いつもの自分を取り戻そうとする力が込められているように感じた。だからこそ私は、その笑顔を「大丈夫」という意味だけで受け取らず、その奥にある思いや、その人が懸命に日常を続けている姿にも目を向けたいと思った。

帰り際、避難者の方々が入り口まで出て来て、「気をつけてな。元気でな」と笑顔で手を振ってくれた。支援する側として現地に入った私が、最後には避難者の方々から勇気をいただき、見送られた。その笑顔は、今も心に残っている。

 

災害支援とは、失われたものをすべて取り戻すことではない。その人のもとへ足を運び、生活に寄り添い、その人の「あたりまえ」を一つひとつ支えること。そして、悲しみの中で過ごす時間を、ほんの少しでも穏やかにすることなのではないか。5日間を通して、相手の言葉に耳を傾け、同じ時間を過ごし、一緒に笑うことも確かな災害支援なのだと学んだ。これからも必要な場所へ足を運び、一人ひとりの「あたりまえ」と、その人らしさを支えていきたい。

 

【災害支援・対策(iER)】熊本地震災害支援活動を通して
【災害支援・対策(iER)】熊本地震災害支援活動を通して

 

看護師 梶原公美

 

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