参加者の声

長期・短期ボランティアや研修に参加されたみなさまの声をお届けします。

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2024.07.10

患者と自分を見つめた1年半

▼ジャパンハートでの活動地(国内・海外)を教えて下さい

国内:山形県の新庄徳洲会病院
海外:ミャンマー、カンボジア、ラオス
被災地:能登半島沖地震での医療支援活動

▼ジャパンハートでの活動期間

<国内活動>半年(2022/11~2023/4)
<海外活動>1年 (2023/5~2024/5)
 ●ミャンマー:5ヶ月
 ●カンボジア:7ヶ月
 ●ラオス:2週間
<被災地>約2週間

▼活動地での研修内容・経験したことを教えてください

<国内活動>
新庄徳洲会病院では主に外科・歯科口腔外科・内科一般病棟で活動。また、同時期より新庄プロジェクト(人材確保のためのプロジェクト活動)が開始。
各地を訪れて、SNSでその土地の名産物などを紹介しながら広報活動を行いました。

<海外活動>
●ミャンマー
月に一度、吉岡ミッション(1週間で約100名の患者の手術を朝から夜中まで行う)があり、術前・術後の患者のケアや管理。

●カンボジア
主に成人病棟と外来で活動。ひとりっ子(現地の病院に駐在し、患者ケアを行う)も参加しました。
ワーキングチームを結成し早期離床チームでの活動も実施。

●ラオス
3日間で12名の甲状腺疾患患者の手術活動に参加。また、その後の居残りケアも経験しました。

▼ジャパンハートの研修に参加を決めた理由を教えてください

まず看護師を目指した理由が、国際医療支援に携わりたかったからです。
大学時代の休暇に途上国(カンボジアやインド、ケニアなど)を訪れホームステイをしながら現地の孤児院や学校での活動に参加していました。
その際に、現地で働く看護師さんに出会う機会があり、いつかこのような形で貧しい方々の力になりたいと思うようになりました。
そして、大学卒業後に看護専門学校への進学を決めました。
看護師4、5年目でこの先の自分のステップアップを考えた時に、夢であった国際医療支援を思い出しました。
コロナ禍の時に調べ始め、現地で直接患者さんへのケアや医療行為ができるジャパンハートに魅力を感じました。
コロナが明け、ジャパンハートの募集再開と同時に、迷いなく応募しました。

▼参加までのハードルや、解決するべき課題など(仕事・お金・家族の説得など)

●仕事
看護師5年目というとまだまだ経歴は浅く、もう少し経験を積んでから、、と迷う気持ちはありました。
しかし、年齢やコロナ禍を経験し、今行動しなければ後悔するのではないかという思いがありました。
また、病棟の師長さんにはいつかこのようなプログラムに参加したいという思いは日頃から伝えていたため、スムーズに承諾をいただきました。

●お金
いつか参加するかもしれないという思いがあったので貯金はしていました。
私は大学時代の奨学金も抱えていたため、活動に参加した場合のことも考えプラスで貯金をしていました。

●家族
もともと途上国での活動に関心があったことや看護師を目指した理由も伝えていたため、大きな反対はなく協力してくれました。

▼言語・価値観が違う現地の方々、また駐在している日本の医療者との活動で困ったこと、また工夫などありましたら教えて下さい

初めは日本の医療と比べてしまい、もっとこうした方がいいのではという一方的な考えがありました。
現地のやり方や考え方にはそれまでに至った過程があり、「患者さんのために」という考えは一緒だということを少しずつ理解するようになりました。

しかし、理解できるまでには、スタッフとコミュニケーションを図ることや文化を知ることが必要でした。
大切なことは自分の意見や考えを持つこと。そしてそれをきちんと相手に伝える姿勢。
伝えるといっても、英語でのやり取りはスムーズにいかないことも多かったです。私は事前に英語にまとめて、かつ簡単な英語で相手に伝わるよう工夫しました。

また、ひとりっ子を経験したことで、現地の伝統的な医療が行われている現場を見たり、実習に来ている看護学生と関わることでJHCMCのスタッフがどのように看護を学んでJHにやってきたのかを知ることができました。
相手の文化や育ってきた背景を知ることは、相互の誤解を減らすことにつながったり、今まで固定概念にとらわれていたことに気付くきっかけになりました。

▼現地医療の醍醐味はなんですか

担当した患者さんが笑顔で退院する時です。
ミャンマーでは患者さんの創部のケアから退院日の決定、フォロー日の選定など看護師が責任を持って決めます。
また、日本のように薬が豊富にあるわけではなく、基本は洗浄。
ただ洗浄といっても洗浄方法や洗浄の回数を考え、また湿潤環境を保つための工夫などをしました。
時間はかかるけれども患者さんがもつ自己治癒力に感動したことを覚えています。
今まで薬剤に頼っていたことを反省しました。患者さんには創部を治すために必要な栄養力が備わっているのか、他に邪魔している要素はないのか、そのように全身状態を見ることも大切だと学びました。
このようにして、患者さんとじっくり向き合う環境があり、向き合った分だけ得られるものはとても大きいです。
悲しいことも楽しいこともありますが、患者さんのことを考える時間は自分を大きく成長させてくれます。

▼活動地での忘れられないエピソードがあれば教えてください

カンボジアでの活動で、ある高校生の女の子と出会いました。彼女は、患者さん(お母さん)の付き添いでした。
カンボジアやミャンマーでは入院中の家族の付き添いが普通で、付き添いがいないと入院ができません。
彼女の服装がいつも同じで汚れているのに気がつきました。また、髪の毛も乱れておりどこか暗い表情をしていました。話かけてみると「大丈夫」と素っ気なく、話したくないのかなと思いました。

しかし、2、3日と声をかけ続けたある日、突然泣き出しました。
母親から暴力を受けていたことや父親が薬物使用で母親と離婚し、頼りにできる家族がいないこと、母親の病気の影響で学校を辞めたことなど抱えている悩みを泣きながら話してくれました。
それでも彼女は献身に母親の世話をしてくれていたのです。
また彼女自身も血便で悩んでいました。そのことをすぐに医師やクマエナースにも共有し患者さんだけでなく彼女自身も気にかけて欲しいと情報共有しました。彼女の診察もしてくれました。
あるクマエナースは、夜勤中の空いている時間に彼女の話を親身に聞いてくれました。

この経験を通して、カンボジアでは家族が患者の身の回りの世話をしてくれていますが、そのことが負担になっている家族もいることを忘れてはいけないこと、そしてそのことに気づき、支援に繋げることも看護師の役割だと学びました。

▼帰国後はどのような活動をされますか?(される予定ですか?)

今回の活動を経て、今後はより患者さんと距離が近い場所で活動したいなと思います。
また、患者さんに関わる家族へのサポートも行っていきたいです。
まだ次の目標・夢が漠然としているため日本で地域医療や在宅などの分野に関わりながら次のステップに進みたいなと考えています。

▼今後の参加者へのアドバイスと、参加を迷われている方へ一言お願いします

行動に移すことは勇気がいることだと思います。仕事のこと、お金のこと、悩みは尽きません。
私は変わり映えのない生活にこのままでいいのかなと思う日々が続いていました。
その時にいつも思い出すのは、看護師を目指した時の思いでした。
思い切って行動した先には、自分と同じような志を持った仲間がいます。
それぞれが持っている考えや気持ちは違いますが、目指す先は一緒です。
患者さんのため、現地のスタッフのため、試行錯誤しながら共有した時間は本当にかけがえのない時間だったと思います。

看護師 吉田 夕佳様