VOICE

▼はじめに
昨年6月「ジャパンハートこども医療センター」に院内感染防止対策チーム(ICT)があることを知りメンバーとして関わってから1年が経ちました。院内感染防止対策はその施設の文化であり定着に時間がかかることは日本での経験からよく承知していたため、とにかく院内感染防止対策を進めるためのアイデアや具体的な取り組みをICTミーティングで提案してきました。
今回1年間を振り返ってみるとともに新たな取り組みを試みましたので紹介いたします。
臨床検査技師活動報告㊴ 1年間の院内感染防止対策チーム(ICT)活動を振り返って
▼ICT活動内容
昨年の6月より月1回開催のICTミーティングに参加しこれまで日本での経験を活かしカンボジアでもできそうな取り組みを行ってきました。
まずスタッフの血液媒介感染症予防と針刺し防止に関する取り組みから始めました。血液媒介感染症予防に関しては啓発ステッカーを全血球計算器に貼付するとともに、採血管搬送時血液の入った採血管を直接触れないよう簡易な試験管立てを導入しました。また現病院の採血管は真空採血管ではなく採血管キャップを必ず開けて血液を分注しないといけないのでリキャプは必須です。そのため針刺し防止グッズを導入することでリキャップ時の針刺しを少しでも減らせるよう取り組みました。
臨床検査技師活動報告㊴ 1年間の院内感染防止対策チーム(ICT)活動を振り返って
次に手洗いに関する取り組みです。先と同様に手洗い啓発ステッカーを作成し手洗いシンク周辺及びアルコール手指消毒ボトルに貼付しました。しかし作成したステッカーがラミネートでカバーしてもしばらくすると字が汚れて滲んでくることに気づき、撥水性ステッカーを一時帰国時に日本で探しカンボジアに持ち込み滲んだステッカーと交換しました。また感染防止対策基本を明記したステッカーも作成し目につくところに貼付しました。

手洗いに関して臨床検査技師活動報告No.33のとおり、カンボジアでは日本のようにペーパータオルが広く市販されていないため手洗い後の水分除去には共有タオルが欠かせなくなっています。そのため共有タオルの汚染状況及び共有タオル使用後のアルコール手指消毒を勧めるため培地を用いてのサーベイランス(調査)を行いました。日本では流水による手洗い後のアルコール手指消毒は勧められていませんが現病院での最善の策と思い取り組んでみました。
臨床検査技師活動報告㊴ 1年間の院内感染防止対策チーム(ICT)活動を振り返って
今回新たな取組みとしてスタッフ向けに院内感染防止対策に関するQ&Aを作成し「はい・いいえ」で回答できるような設問と簡単な解説を記した17題を作成しました。まず設問17題をスタッフ向けアプリーにアップロードし翌日17題の回答を再びアップロードしました。内容は総論、環境整備、針刺し防止、標準予防策、感染経路別予防策、消毒、リネン管理について出題しましたが、いかに身近で興味が湧くような内容にするかを思案しました。少しでも院内感染防止対策に対するスタッフの興味が湧いてくれればと思っています。
臨床検査技師活動報告㊴ 1年間の院内感染防止対策チーム(ICT)活動を振り返って
▼おわりに
私の活動期間も残り少なくなりこれまでの取り組みで病院全体の院内感染防止対策に関するムードがよい方向に改善されたかと言えばまだまだのような気がします。ここまでの取り組みの評価を何等かの形で行うことが必要ですがその猶予も無くなってきました。いわばやりっぱなしの状態で終わるかもしれませんが、それでも活動期間中の取り組みは少しでも院内感染防止対策に役だったのではないかと思っています。あとはICTチームが引き続きさまざまな取り組みを継続してくれることを願うばかりです。

臨床検査技師
森 三郎