VOICE
「ACLS普及に向けた大きな一歩」
病院の外来には時々心停止の患者さんや重症な状態の患者さんが運ばれてきます。実際に私自身も溺水で運ばれてきた小児患者や、交通外傷による成人の心停止患者など、何度か心停止の患者に遭遇したことがあります。院内でBLS活動が活発であることもあって多くのスタッフが心停止時に胸骨圧迫をすることや、応援要請をしてすばやく集結し患者対応をすることはできます。しかしながら、その現場に指示を出すリーダーが不在であったり、人が集まりすぎて場が混乱してしまっていたりと、チームとして活動することにおいてはまだまだ課題があります。
チームダイナミクスを意識した急変対応を行うということは、ACLSのコース内で取り上げられており学ぶことができます。しかしACLSはカンボジア国内で受けることは難しく、ベトナムなど海外へ行って勉強する必要があります。
1人でも多くの患者を救うため、また急変対応時にチームとして動くことができることを目指し、今年の3月から本格的にACLSコースを開催できるようemergency teamでは取り組みを開始しました。


▲DCや挿管のレクチャーは実技も入れました
前任者の方が土台を作ってくださっており、私がまだカンボジアに来て日も浅く、クマエスタッフとも十分にコミュニケーションをとれていない中、この活動はスタートしました。そもそもACLSとは何か知らないスタッフへ一つひとつ英語でレクチャーを行う難しさはありました。また、使える薬剤や物品も限られているためJHの病院に適応するようアルゴリズムを修正する必要もありました。しかしチームメンバーらは積極的に勉強会に参加してくれ、楽しそうに新しい知識を吸収している姿がとても印象的でした。5月からコツコツとレクチャーを行い、8月には全てのレクチャーが終了し、いよいよチームに分かれてシチュエーションを練習する日が来ました。事前に日本人メンバーで撮影しておいたデモンストレーション動画を見たり、チェックリストを活用しながらクマエスタッフにも1人ずつ役割分担をし、リーダーの指示のもとチームで協働することを意識してもらいました。練習の日、私は一人っ子活動で別の病院にいたためオンラインでの参加となりましたが、堂々と指示を出しチームで協働している姿や何度も自主的に繰り返し練習している姿を見て感動したことを覚えています。同時にスタッフの吸収力、適応の速さに驚きました。

▲真剣に練習する姿
練習はメンバーを2グループに分けて2日かけて行い、最後に筆記テストと実技テスト(1人ずつリーダー役を行う)を行いましたが、結果的にemergency teamの看護師10人全員が合格することができました。
合格が発表された後スタッフらは安堵の表情を見せ、画面上の私に向かって認定証を見せて喜んだりしており達成感が伺えました。メンバーからは教えてくれてありがとうと感謝の言葉がとても多かったことを覚えています。
私自身も、やっと一つの山を超えたという実感がありホッとしたと同時にこれからも活動を続けていかねばと引き締まった気持ちになりました。
今後は今回合格したメンバーから、院内の他のメンバーへレクチャーを行う練習を行い、ACLSコースの定期的な開催を目指していきます。
まだまだ課題はありますが、頼もしい仲間とであれば楽しくできると確信しています。

▲チームメンバーでミーティングを開催した時
ACLSコースの受講を通してスタッフらがチームダイナミクスを生かした急変対応が少しずつでもできるようになり、患者さんを救うことができる未来を目指してこれからも頑張っていきたいです。
看護師
蛭川陽香
