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今回、私は小児固形がん周手術期技術移転プロジェクトの第2回目に参加しました。活動を通して、ラオスにおける社会的背景が医療へ与える影響の大きさを強く感じました。
ラオス小児プロジェクト〜一つひとつの背景に目を向け、寄り添う大切さ〜
ラオスでは、診療や診断に必要な検査費用、治療に使う薬剤や処置物品をすべて先払いで準備しなければなりません。所得水準も低く、経済的な理由で必要な検査すら受けられない子どもたちもいます。さらに地方では、診断に欠かせないエコーがなかったり、エコーがあっても使用できる医療者がいなかったりするなど、医療環境そのものにも課題があります。病院を受診していても、必要な物品や知識不足により病気が見逃され、命を落としてしまう可能性があるという現実も知りました。

また、首都の大きな小児病院まで行く交通費を工面できず治療を諦めるケースや、信仰心から「これも寿命・運命である」と治療を選択しない背景もあります。

そのような状況の中で、今回のミッションでは5人の患者さんが手術を受けることができました。そのうち2人は腫瘍摘出により補助化学療法が不要となる「助かる命」でした。一人は金銭的な理由で首都へ行けない状況にありましたが、交通費支援によって手術に繋がりました。もう一人は一時連絡がつかない状況になりましたが、JHスタッフや小児病院の先生方など多くの方の力により連絡がつき、無事に手術を行うことができました。
一人ひとりの背景や経緯を知ることで、患者さんが手術に辿り着くまでの道のりの長さと重みを実感しました。

一方で、医療者との関わりから得た気づきも多くありました。
普段活動しているカンボジアではJH病院があり、私自身も医療行為を行えますが、ラオスでは直接医療行為を行うことはできません。小児病院のスタッフが主体となって手術管理ができるようサポートする立場になります。スタッフは通常業務と並行してミッション患者を担当しており、限られた人数の中で他の患者さんの安全も確保しなければなりません。

また、看護教育体制や看護師の役割も日本とは異なり、日本では根拠に基づくアセスメントが求められますが、ラオスでは医師へ必要な情報を提供する役割が中心です。そのため、私が持つ知識や経験をそのまま当てはめても実践につながらなかったり、継続できる方法にならない可能性があります。

だからこそ、ラオスのスタッフが普段行っている方法や考え方を尊重しつつ、患者さんの命や安全を守る上で必要なポイントを一緒に考えていく姿勢が重要だと感じ、心がけながら活動を行いました
ラオス小児プロジェクト〜一つひとつの背景に目を向け、寄り添う大切さ〜
また、前回ミッション以降、JHスタッフの定期的な介入もあり、小児病院スタッフとの信頼関係が着実に築かれている様子を見て、医療者として活動する前に「人として向き合う姿勢」や「コミュニケーションの積み重ね」の大切さを改めて感じました。

ミッション自体は5日ほどの短い期間でしたが、カンボジアとの違いや日本の医療との違いを考える機会が多く、社会制度や教育が患者さんの治療や命を左右する現実を深く考えさせられました。根本的な制度を変えることは難しいかもしれませんが、その背景を理解することは、医療者との協働や患者さんへのケアを行う上で欠かせない視点だと思います。

術前、緊張しながらも笑顔を見せてくれた患者さんと家族。
術後、無事に手術を終えて安心する姿や、一方で経過を心配し不安が残る姿。日々回復していく子どもたちの様子を見ながら、家族の表情に少しずつ明るさが戻っていくのを感じました。関わったのは数日間ですが、この経験がラオス小児病院における今後の看護や術後管理の一歩につながり、ラオスの医療活動の小さな力になれたのであれば嬉しく思います。
ラオス小児プロジェクト〜一つひとつの背景に目を向け、寄り添う大切さ〜
ラオス小児プロジェクト〜一つひとつの背景に目を向け、寄り添う大切さ〜
得た学びを今後のカンボジアでの活動にも活かしていきたいです。

看護師
今井絢香