VOICE
一緒に考え、一緒につくる――現地病院の帝王切開、自立への歩み
メディカルチーム助産師の近澤です。
今回は、私たちの活動の中心であるポンネルー病院における「帝王切開の技術移転」についてレポートします。
同院からの依頼を受け、ここ数年間はジャパンハートの周産期部門が介入し、現地スタッフが自立して手術を行えるよう勉強会やトレーニングを重ねてきました。
2025年には同院のオペ室で手術ができるまでになりましたが、その後、改修工事のため約半年間の中断を余儀なくされました。その間はジャパンハートのオペ室を使用し、双方の医師やスタッフが協働して手術を継続。そして今年3月、工事が完了し、新しくなったポンネルー病院のオペ室で無事に手術を再開することができました。
一方、オペ室が新しくなったことで、物品の配置や動線などすべていちから立て直しとなります。ポンネルー病院の医師と助産師、そして日本人ボランティアで産婦人科医師の森川先生と私たち日本人助産師で、事前に相談やシミュレーション、必要物品の配置を行いながら、初日の手術日を迎えました。
初日の手術は、準備から入室、入室から手術開始まで思うようにうまく進まず、「あれがない、これが足りない」でてんやわんや。挙句の果てに手術途中で停電に見舞われ、術中にスマホの光で照らす場面もありました。手術自体は無事に終了することができ、その後に実際に手術をやってみて足りなかった物品の確認や、時間のかかってしまった動線の変更など行いました。カンボジアの病院で過ごすとよく停電に見舞われます。予備の懐中電灯などの準備が必要なことも再確認し初めての手術は終了しました。

↑手術後はDrもMwもみんなで掃除をします。
そして予備の懐中電灯2つを用意して挑んだ2回目の帝王切開。
手術予定時間の1時間前から水が出ない!断水に見舞われてしまいました。手術執刀前の手洗い用にフィルターを通した自動の水道があるのですが使用できない事態に。かろうじて一つだけ使用できる水道があったのでなんとかなりましたが、なんともカンボジアらしい出来事だなと感じてしまいました。

↑停電の時の様子
それからも何件も帝王切開を重ね、「褥瘡予防にクッションがあるといいよね」「身だしなみをチェックできるよう鏡がほしいな」「ストッキングが汚れるから袋でも被せてみる?」とみんなで少しずつ形にしていき、最初は足元にあったホワイトボードも壁に書きやすく固定され、電子時計や鏡も設置して、褥瘡予防のクッションはポンネルー病院の医師自らが作ってきてくれました。


↑床に置いて使用していたホワイトボードも壁に書きやすく掛けられた
最初はゆっくりだったガーゼカウントと出血量のカウントも、今では素早く適切なタイミングで行うことができています。カンボジアの病院では、ガーゼカウントや出血量のカウントを実施しない施設がまだまだ多くあります。必要性は分かっていても人員不足だったり、必要性自体を軽く見ているように感じられる場面に、私自身も多く遭遇しました。そのため、ポンネルー病院ではそれらの必要性を理解し、実行できていることに嬉しさを感じます。

↑心電図モニターを素早く装着できるように掲示
カンボジアの病院特有のトラブルに揉まれながらも、こうして現地スタッフと知恵を出し合い、オペ室が文字通り「自分たちの場所」として育っていく過程に、私自身も大きな変化を感じています。
最初は心配な場面もありました。しかし、予測不能な環境を面白がりながら、目の前の課題に対して「今あるもので何ができるか」を現地スタッフと共に泥臭く考える楽しさを、彼らの姿勢から教わった気がします。
これまで介入されてきた方々の関わりを元に、単なる技術の移転にとどまらず、お互いの工夫や小さな喜びを共有し合える関係になれたことが、私たちにとって何よりの財産です。これからも彼らの自立への歩みに寄り添いながら、私自身も一歩一歩、共に成長していきたいと思います。


↑双胎の帝王切開も行えるようになりました。
助産師
近澤
