VOICE
ラオスでの小児ミッション
私は以前、日本の小児病院で勤務しており、現在はカンボジアにあるジャパンハートこども医療センターの小児病棟で活動しています。そして今年7月に初めてラオスの国立子ども病院で行われたプロジェクトに参加させていただきました。同じ小児看護ではありますが、日本やカンボジアとは異なるラオスの文化や特徴を感じました。
まず、今回私が参加させていただいた“小児固形がん周術期技術移転プロジェクト”はラオスの首都ヴィエンチャンにある国内唯一の国立子ども病院で行われています。
ラオスは医療者の人材不足だと言われており、私が活動させていただいた子ども病院の外科病棟では、看護師は日勤4名、夜勤2名で勤務していますが、手術室・リカバリー室・一般病室・外科外来のすべての業務を行っていました。
また医療保険制度はあるものの、国の財産難により実質的に機能しておらず、基本的に治療費は患者の全負担となります。医師の指示により処方された薬、必要物品などを家族が購入し、それらを使用しながら治療が行われていました。
そのためお金がなく購入できない場合には治療が受けられないのが現状です。看護師免許制度は近年導入されたばかりで、看護師は医師の補助的役割が強く、独立した看護実践はあまり普及していない現状があります。
日本で働いていた際には、看護師が観察、アセスメントを行い、何か異常があれば医師へ報告し、異常の早期発見、安全安心な医療を提供することが当たり前だと感じていました。そのため、このようなラオスの看護師の役割に私は驚いたと同時に、ラオスの医療現場での関わりかたについて考える機会となりました。
今回、腎芽腫のため手術を行った6カ月の男の子がいました。術後は全身管理に加えて、ドレーン管理なども必要となります。また術後合併症に注意し観察を行う必要があります。
ラオス看護師の多忙な業務の中、どのように周術期管理を行うべきなのか日本人看護師間で何度も考え検討しました。事前に行われていた勉強会を踏まえ、どこを観察するべきなのか、どのように看護記録を書くのかなど、ラオス看護師が意欲的に興味を持ち実践しようとしている様子もありました。
しかし実際には日々の業務に追われ、新たな記録の記入までは時間的な余裕がない状況でした。しかしながら、術後急性期の患者はリカバリー室に入室し、その間は研修医をはじめ、医師が定期的に患者のもとを訪問していました。また入院期間中はカンボジア同様、必ず家族が付き添うのが基本です。そのため、何か異常があれば早期に発見できる状況にあります。
日本での方法を導入するのではなく、限られた資源を効果的に活用し、患者の安全を守りながら医療の提供ができる手助けを行うことが大切だと感じました。
日本での看護師の在り方が当たり前だと考えず、各国の文化や考え方を理解し、その中で何ができるのか、何をする必要があるのかを考える必要があると再確認しました。今回ラオスの文化の違いや特徴を知ることができ、また自分自身がそれらの違いをスムーズに受け入れることが出来ていることに気が付きました。
これはジャパンハートで活動を開始し、カンボジアの環境でたくさんの現地スタッフと日頃より会話し、共に協力し合いながら活動し、時には文化の違いにより驚くことや意見が食い違うこともありますが、話し合い、考え、互いを受け入れながら活動できているためだと感じます。
今回、ラオスにおける小児固形がん周術期技術移転プロジェクトの第1回目の手術技術移転に関わらせていただくことができ、私自身貴重な体験となりました。そして今後も続くプロジェクトのなかで技術移転が進み、少しでも多くのラオスの子どもの命が救える未来になるように願っています。
看護師
白谷万葉