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アジア開発途上国、日本の離島・へき地で活躍するメディカルチームの
看護師・助産師たちの葛藤や感動、日々の出来事を綴ったブログ

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看護師

2024.10.16

自分の知っている世界にはある選択肢。だけど、ここにはない。

7月、術中経過から、術後に集中治療管理が必要となった患者さんがいました。
当日は夜勤で、私はこの患者さんの担当でした。
術前情報を確認していて、夜勤で来た時に手術が終わっていなかったら(午後一例目の3時間予定)、術後の全身管理が大変な症例になるだろうな、終わっていたらいいな、と思っていました。

いざ出勤すると手術は続いており、終了の目途もたっていませんでした。
術中経過を確認する中で、患者さんの重症度はどんどん上がっていきます。
日本で集中治療領域での経験が長かったため、経過から術後にどんな管理(薬剤や機器、記録等)が必要になるか、そのために何を準備し、医師やオペ室とどんな調整をする必要があるのか、ある程度予測することはできまいた。
しかし、このカンボジアの病院で実際にどう管理するのか、具体的にイメージできていませんでした。

大部屋しかない病棟。
その中でご家族やほかの患者さんにどう配慮しながらケアをしていくか。
中央配管のない病院での人工呼吸器管理。しかも重症患者さんの急性期。
人工呼吸器や昇圧剤を使用しての全身管理を要する患者さんをみた経験のないスタッフと、今後どう安全を確保しながら全身管理を行っていくか。
文化や宗教、言語の違いの中で、していいこと、好ましくないことは何なのか。
これまでの知識や経験をもとに何ができるか、何をする必要があるのか。

ジャパンハート メディカルチーム 看護師

手術から1週間。
患者さんが亡くなるまで、毎日必死に患者さんや家族、病棟スタッフ、そして自分と向き合いながら対応をしていました。
そして亡くなった後も、色々な場面でこの時のことを思い出します。
それは私だけではなくクマエも同じようで、先日も手術室看護師との会話の中に、この時のことを話題に上げる様子がありまいた。

カンボジアに来てもうすぐ11カ月がたちます。

色々なところで医療や看護の違いを感じることはありましたが、このとき、それを「差」として強く実感したことを覚えています。
金銭面や医療に対する知識の違いなどで、カンボジアでも受けられる(受けられた)はずの治療が受けられないケースは多く見てきました。
しかし、この患者さんは選んだ治療の経過の中で、急に限界を突き付けられるかたちになってしまったケースでした。

ジャパンハート メディカルチーム

日本だったらもっと検査のハードルが低い。薬剤の選択肢もたくさんある。
その結果でできた治療はきっとあっただろうし、日本だったらこうしていたはず。
そうしたら患者さんの予後は変わっていたんじゃないか。

ここにはない、けど自分の知っている世界にはある選択肢、それを提案することすらできない現状、それを日本から来た自分は「差」に感じたのだと思います。

関山 弘子
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次につづく。

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