ミャンマー
2019.10.02
シンプル&リズミカルな手術を求めて
「どうすれば手術がうまくなりますか?」
昨年ミャンマーに来た頃、お茶会で吉岡先生に質問した。日本では救急総合診療医として働いていた自分にとって、外科は未知の世界だったからだ。
すると、手術を「やりたい」ではなくて「できる」と思った時にやらせるようにしていると言われた。ミャンマー人医師にも最初の2年間はただ自分の手術を見せるだけにしていたと。
そしていまやそのミャンマー人医師、Dr. She Lwin Moeは手術ミッションを牽引する立派な外科医になっている。彼の手術も吉岡先生と同じくシンプル&リズミカルで美しく、いつか自分もあんな風な手術ができるようになりたいと憧れる。
今の自分に目の前の手術ができるだろうか?
目を閉じて、メスで皮膚切開を入れるところを想像してみる。
細い血管に気をつけながら、電気メスで深く切り開いていく。
小さな神経を損傷しないように、そっと膜を把持する
思っていたよりも癒着が強く、そこで手術の手が止まる。
さあ、どうする?
こんな風に想像して、実際の手術に前立ちで入る。優れた外科医達がどうやってその場を鮮やかに切り抜けていくかじっと観察してメモし、ビデオで振り返る。そしてまた、粗い木目にヤスリをかけるように、何度も繰り返し想像する。今度は自分だけで同じ場面を乗り越えられるだろうか?
もっと手術がうまくなりたい。
もっと綺麗に、美しく、手術をしたい。
手術ミッションが終わるたびにそう思い、翌月の手術ミッションまでは内科医に戻る。内科も外科も麻酔も、どれも本当に広くて深くて面白い。こういう恵まれた環境に身をおくことができていることに心から感謝しています。
ワッチェ慈善病院 長期ボランティア医師 大江将史