ミャンマー
2019.11.11
熱発患者のプレゼンで、体温以外に知りたいこととは・・・。
ミャンマーで長期ボランティア医師をしている大江です。
ジャパンハートの看護研修生に身体診察のレクチャーをする機会が時々あります。
「身体診察はお好きですか?」
こう聞かれて、「大好きです」と即答できるひとは少ないかもしれません。でも、モノが少ない離島や海外医療の現場では丁寧な身体診察のおかげでその後の治療方針が変わることがあります。
看護師の身体所見で一番大事なこと、これは間違いなく、「いつもと様子が違う」ことに気づけることです。
・普段ニコニコ笑っている人が今日はなんとなく表情が薄い。
・目線が合わない
・泣き声が弱々しい
・いつもよりあまりご飯をたべてない。
・いつもより歩くスピードが遅い。
・本人は大丈夫と言っているけど、家族は「いつもと様子が違うんです!」と不安そう。
こういった違和感を敏感に感じ取れるかは、特に病歴が取りにくい高齢者や小児、もしくは言葉の壁がある離島や海外医療の現場ではとても大切です。
次に重要な身体所見は、バイタルサインをきちんと解釈することです。
よくある失敗は、「昨日まで38度の発熱がありましたが、今日は37度に下熱しているので抗生剤は効いています」と体温だけを感染症の治療効果判定の指標にすることです。
①「体温38度だけど、笑顔でごはんもたくさん食べている」
②「体温38度で、血圧90/60mmHg・脈拍110回/分・呼吸数26回/分・意識もうろうとしていて呼びかけても反応が乏しい」
このふたつは、同じ体温38度でも後者の方が明らかに重症です。患者がどれくらい重症なのかを知るためには、発熱だけでなく、体温以外のバイタルや全身状態を知る必要があります。
最初は体温だけで経過報告していた研修生が、他のバイタルや笑顔や食事量などの全身状態を述べて「笑顔が見られるようになり、食事量も増えてきたので、経過良好です。」とアセスメントしてくれたときにはきちんと患者を診れていると安心します。
患者のそばに一番近いのは看護師です。誰の目から見ても状態が悪くなってからではなく、ほとんどの場合その前からすでに急変の予兆は現れています。その僅かな変化に敏感に反応できるようになるには、どうすればいいか?、そういうことを日々一緒に学んでいきたいと思います。