活動レポート

ジャパンハートはアジア3カ国と、大規模災害などで無償で医療支援をしています。

カンボジア

2018.12.25

10年前の気持ちに応える

チョムリアップスオー!
長期小児科医師ボランティアとして活動している、水野智子と申します。
Japan Heart カンボジアのAAMC(Asia Alliance Medical Center)で活動を開始して、早二ヶ月が経ち、多くのことを経験させて頂く中で、日本人スタッフ、クマエ(カンボジア人)スタッフの皆さんと、毎日充実した時間を過ごしています。

今年2018年の夏より、AAMCの小児科病棟が開院したことに伴い、現在長期小児科医師ボランティアを大募集しています。そこで今回、長期ボランティア医師として、現在どのような活動をしているのか、ご紹介させて頂こうと思っています。

その前に、なぜ自分がカンボジアに来て活動に加わったのか、という話を少し。

学生時代に色々な国をバックパッカーとして旅をしている時期が少しありました。初めて他のアジアの国々を見た時に、そして特にカンボジアを訪れた時に強い衝撃を受けました。まだ小学生にもならない子供達が、朝から働き、そして、「one dollar」と旅行者からお金を貰うために終日話しかけ続ける姿。子供達は皆痩せていて、服は汚れている。おそらく学校にも病院にも行けていないであろうことは容易に想像がついた。
 日本に生まれた自分は、なんて恵まれているのだろう。同じアジアの日本という国に、たまたま生まれたという偶然だけで、自分は子供らしく過ごさせてもらうことができ、学ぶことができ、健康に過ごすことができていたのだ。

 実際にそのような現場を初めて目にした時から、いつかアジアの、とりわけカンボジアの子供達に関わる仕事がしたいとずっと思っていました。当時20歳頃のことです。

 もともと志望していた小児科を専攻し、沖縄のこども病院で研修を積み、離島医療を経て、小児集中治療科で2年間勉強させて頂きました。当時は目の前のことに必死で、毎日があっという間に過ぎることばかりでしたが、心のどこかでいつもアジアの他の国で活動できるタイミングを推し計っていました。
医師になって9年目の今、Japan Heartとの巡り逢いもあり、ここカンボジアに来ています。初めて衝撃を受けたあの頃を考えると、10年以上の時間が経ちましたが、ようやく今、あの頃の気持ちに応え始めることが出来ているような気がしています。
そして実際に現地での活動が始まり、今までの経験が活かされる場面を感じることが多く、このような現場に出会うことができて、ありがたく思う毎日です。

では、小児科長期医師ボランティアとしての活動について、紹介させて頂きます。
AAMCの小児病棟での日々の業務としては、一般外来、一般病棟管理(デング熱や多発皮下膿瘍、感染性下痢など、カンボジアだからこそ多い疾患に加え、コントロールされていない重症喘息の児も多いです)、また小児病棟開院に伴い、現在固形腫瘍の患児達の化学療法をoncology病棟で行っています。カンボジアでは固形腫瘍の治療可能な施設は、当院ができるまで一つもなく、今まで固形腫瘍の子供達はカンボジア内で治療を受けることができない状況でした。開院して間もないですが、既に15人の子供達が当院での治療を受けています。

国際医療ボランティア ジャパンハート カンボジア 医師

 そして、定期的に吉岡先生をはじめとする、外科医の先生方による手術ミッションがあるのですが、その際の小児の麻酔管理、術後管理についても担当・サポートさせて頂いています。今後、固形腫瘍の患児達の腫瘍全摘出術も複数予定しており、術前、術後管理の整備にも現在力を入れているところです。

 その他、学校健診や、新生児搬送、クマエスタッフとの勉強会など、有り難いことに、この2か月の間にたくさんのことを経験させて頂いています。その一つ一つに、日本で働くにあたっては想像もしなかった出来事が起こり、自分が当たり前のように持っていた価値観や考え方を砕かれる瞬間が多々あります。
そして同じだけ、むしろそれ以上、心から嬉しく思える出来事も日々本当にたくさんあるのです。

国際医療ボランティア ジャパンハート カンボジア 医師

国際医療ボランティア ジャパンハート カンボジア 医師

もし、活動参加を迷っている方がいましたら、ぜひ背中を押したいなと思います。どの年代の方でも、その時のタイミングだからこそ出来ることや、見える視点がきっとあり、今年始まったばかりの小児病棟では、とりわけ様々な分野の方が活躍できる場があるのではないかと思うのです。

 そして、現地のクマエスタッフ達はとても素直でハングリー精神に満ちていて、刺激を受けることばかりです。英語、日本語、クメール語がお互い入り混じりながら、日本人スタッフとディスカッションをし、冗談を言い合い、一緒の寮に住んで生活しています。気づけていない文化や考え方の違いはきっとたくさんあるのだと思いますが、日々現場で共に過ごす中で、お互いのことを知り、一緒に仕事をしていくその過程は、毎日とても楽しくもあります。

長期ボランティアを検討されている方は、ぜひ一度短期での参加をお待ちしています!
わたし自身も、この現場で過ごせる時間を大切にし、できることを日々見つけていきたいと思います。

長期ボランティア医師 水野智子